「心不全ってどんな症状ですか?」と心臓に持病のある患者さんに質問されました。 心臓の主な働きは血液を送り出すポンプです。 その力が弱くなって全身に十分に血が届かなくなると、疲れやすくなったり手足が冷えたりします。 さらに血液がうっ滞すると、肺に水がたまって呼吸が苦しくなったり足がむくんだりします。 このように「○○不全」とは、ある臓器が「全く働かない」状態だけを指すのではなく、 その臓器の働きが低下している状態も含みます。 後者はさらに、まだ症状のない時期と症状のある時期に分けられます。 人間の臓器の働きに… もっと読む
第29回 根本的な原因を正そう
台風19号の被害に遭われた全国の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。 自然災害の恐ろしい映像を見ながら、私には災害と病気が重なりました。 川は普段は、飲み水を与えてくれ、田畑などを潤します。 しかしひとたび氾濫すると、人命や建物、農作物などに甚大な被害をもたらします。 決壊した川を人間の血管とします。 血管は酸素や栄養を送って体を養っていますが、破れたり詰まったりすると、 脳卒中や心筋梗塞など命にかかわる病気になります。 川が氾濫した原因を調べる際、決壊した川の堤防の確認だけでは不十分ではないでし… もっと読む
第28回 大切な人を守る予防接種
今年はインフルエンザの流行が早そうです。 今から100年前の1918~20年に世界中に感染が広がったインフルエンザは通称「スペインかぜ」と呼ばれ、 一説では、死者数は全世界で4000万人に達し、第一次世界大戦の終戦にも影響したと言われるほどの猛威でした。 日本でも当時の人口5700万人の4割が感染し、39万人が亡くなりました。 現代にはインフルエンザの予防接種があります。 厚生労働省は、接種によって高齢者では発病を34~55%、死亡を82%阻止する効果があり、 6歳未満の小児の発病阻止率は60%と紹介しています… もっと読む
第27回 健康意識を子どもから
家族が体調を崩したり、病気になったりしたときに、 一番早く、敏感に気付くのが子どもかもしれません。 しかしそれは、健康の大切さを大人から教えられないとできないことです。 町会の会合で向かいに座った先輩お父さんのお話です。 ある時、家でお子さんが突然泣き出したそうです。 なぜ泣いているのか分からずに奥さまに尋ねると、 「学校でたばこは、がんや肺気腫になって命に関わる」と教えられ、 目の前でたばこを吸いだしたお父さんを見て「死んじゃう!」と、泣いたというのです。 お父さんは、それっきりたばこをやめたそうです… もっと読む
第26回 健康年齢ピックに参加を
開催まで1年を切った東京オリンピック。 世に○○オリンピックと冠するイベントは数ありますが、 「健康年齢ピック」をご存知でしょうか? 読んで字のごとく、健康年齢を測定するオリンピックです。 普段、健康を意識することが少ない方に、自分の体や健康に目を向けてもらう「きっかけ」を提供しようと、 信州メディビトネットの講座から生まれました。 健康行事も堅いばかりではなく、NHKのテレビ番組「チコちゃんに叱られる」や「うんこ漢字ドリル」などのように 楽しみながら学べることが必要だと気付いたからです。 ロゴマークも作ってみまし… もっと読む
第25回 がんと向き合うRFL
リレー・フォー・ライフ(RFL)をご存じでしょうか? 24時間歩きながら、がん患者さんや家族を支援し、地域全体でがんと向き合うチャリティーイベントです。 1985年、米国の医師が、アメリカ対がん協会のために寄付を集めようと24時間走り続けたことが始まりです。 その後世界中に広まり、現在は30カ国で毎年400万人以上が参加し、日本でも今年は約50カ所で開催されます。 RFLには「祝う、偲(しの)ぶ、立ち向かう」という3つのテーマがあります。 がんと闘っている方を敬い、励まし、がんを乗り越え今を生きている方… もっと読む
第24回 フレイル予防のお手本
先日、母校信州大学の創立70周年記念式典が開かれました。 特別講演の講師は、諏訪中央病院(茅野市)名誉院長の鎌田實先生。 演題は「心と体の健康法、教えます」でした。 鎌田先生は、私が15年前に同病院に就職する際の面接官でした。 先生の著書「がんばらない」がベストセラーとなって注目を浴びていましたが、 面接後は自ら院内や中庭を案内してくださり、人を大切にする人柄が伝わりました。 私は諏訪中央病院で、消化器科医としてがん患者さんの治療に多く関わり、抗がん剤治療などとともに緩和ケア病棟も担当しました。… もっと読む
第23回 フレイル予防 高齢化の鍵
前回紹介した要介護と健康の中間の状態にあたり、適切な対策で回復ができる「フレイル」。 重要とされる理由は「予防」ができるからです。 フレイルは、 ①体の衰え ②心の衰え ③社会性の衰え の3つが相互に負の連鎖をしています。 患者さんの中には「年をとって”ずく”がなくなってきた。へ~もういいわい」と言う方がいます。 意欲が衰えると、趣味や集まり事などに出掛ける機会が減って閉じこもりがちになります。 動かないことで体力や筋力が衰え、心臓や肺活量も弱って息切れがするため、外出がますますおっくうになります。 外出し… もっと読む
第22回 可逆性備える「フレイル」
高齢化時代の健康づくりの新しいキーワード「フレイル」をご存知でしょうか? メタボ、ロコモは聞いたことがあるけど今度は4文字? と 興味を持っていただいた方、ありがとうございます。 フレイルは、Frailty(虚弱、老衰)という英単語を元に作られた造語で、 要介護状態の一歩手前の段階を指します。 「自分は健康」と言う方が、軽度の感染症や転倒などをきっかけに、 寝たきり、認知症、要介護、施設入所、入院など、 その原因に見合わないほどの大きな結果につながる場面にしばしば遭遇します。 若い頃には問題にならなかったことが… もっと読む
第21回 ピロリ菌と肝炎ウィルス
慢性感染は、発がんの約20%を占める大きな要因です。 今回は、がんを起こすピロリ菌とB型・C型肝炎ウイルスについて学びましょう。 ピロリ菌に感染していると5~10倍胃がんにかかりやすく、 肝臓がんの8割はB型・C型肝炎ウイルスが原因です。 国内では年間に胃がんで4万5000人、肝臓がんで2万7000人が亡くなっています。 それだけに病原菌の発見は医学的、社会的に大きな衝撃があり、 ピロリ菌とB型肝炎ウイルスの発見者はノーベル賞を受賞しました。 【予防】 体内に入れないために感染経路を確認します。 ピロリ菌は口から感… もっと読む