2018年9月22日(土)塩尻市市民交流センター「えんぱーく」にて開催いたしました。
テーマは「健診から健康づくりをはじめよう!」と「生活習慣病 治療の必要性を考える」でした。
講座内容
①(CHECK)「健診から健康づくりをはじめよう!」
〜健診と検診のちがいを知っていますか?〜
塩尻市健康福祉事業部 長岡 春美・米山 佳織 保健師
塩尻市役所から長岡保健師、米山保健師が来て、「健診」の重要性を講義してくださいました。
○長野県の健康課題
脳卒中や心疾患の原因となる高血圧、肥満や糖尿病などの予防が喫緊の課題です。
脳卒中などの原因となる高血圧・糖尿病や、死因の上位であるがんなどを予防するため食生活や運動など生活習慣の改善に取り組むことが重要です。
○長野県が目指す健康長寿の取り組み「信州ACE(エース)プロジェクト」
長野県は、単に「長生き」を追求するだけではなく、一人ひとりが生涯にわたり尊厳と生きがいを持ち、その人らしく健やかで幸せに暮らせる「しあわせ健康県」の実現を目指しています。
しあわせな暮らしの基礎となる県民一人ひとりの健康を更に増進するため、長野県の課題である脳卒中などを予防するための生活習慣の改善に取り組む「県民運動」を展開しています。
ACEは、脳卒中等の生活習慣病予防に効果のある
Action 体を動かす
Check 健診を受ける
Eat 健康に食べる
を表していて、更に「世界で一番(ACE)の健康長寿を目指す想い」を込めたものとなっています。
○長野県のAction・Check・Eatの状況
Action……男性の約8割、女性の約7割が目標歩行数(男性:9000歩 女性8000歩)に達していない。
Check……特定健診(40歳〜74歳)の受診者は2人に1人。
8割以上の人が自分の血圧値を知っているが、基準値を正しく認識している人は約3割。
Eat……… 1日の食塩摂取量の平均は男性11.2g、女性9.5g。
9割の男女が食塩を摂りすぎている。
20〜50歳代の野菜摂取が少なく、男性の約6割、女性の約7割が野菜不足。
○3つの重点項目・健康長寿のために取り組んで欲しいこと
Action「毎日続ける速歩と体操〜休日は楽しみながらウォーキング〜」
→運動を続けることで、生活習慣病や生活機能低下の改善・予防に効果があります。
Check「家族そろって必ず健診〜毎年の歯科チェック、毎日の血圧チェックも〜」
→家族全員が年に1回は健診や歯科チェックを受け、生活習慣を見直す機会にするとともに、血圧が高めの人は、毎日測定するようにしましょう。
健診は体の変化を知り、生活習慣を見直すきっかけになります。
また生活習慣病のリスクを早期に発見し、早期治療にも繋がります。
Eat 「減らそう塩分、増やそう野菜〜1食の塩分は3g、野菜はもう一皿〜」
→調味料の使い方を工夫した食事や野菜を使った料理を楽しむとともに、外食などの際には塩分表示を確認しましょう。
減塩により将来の高血圧を予防できます。
また、野菜を多く摂ることで、高血圧や肥満、糖尿病、がん予防にも効果があります。
○ご存知ですか?「健診」と「検診」の違い
・健診とは、健康かどうか・病気の危険因子があるかどうかを確かめること
例:特定健康診査
・検診とは、ある特定の病気にかかっているかどうかを調べるために診察・検査を行うこと
例:がん検診
○知っておきた予防医学
一次予防…病気にならない生活習慣づくり
二次予防…健診などを受けて病気を早期に見つける
3次予防…病気からの社会復帰
運動を日々に取り入れる、健診を受ける、塩分摂取量を減らし野菜摂取量を増やすなどに留意し、長生きで、人生を最後まで楽しめるようにして欲しいです。
②(EAT)(ACTION)「生活習慣病」
〜生活習慣病治療の意義と必要性を考える〜
塩尻市しいな医院院長 椎名 裕之医師
塩尻市のしいな医院の椎名医師が、知ってるようで知らない生活習慣病の治療について講義して下さいました。
○生活習慣病とは
生活習慣病とは、食生活・運動・休養・喫煙・飲酒などの生活習慣が発症や進行にかかわる病気の総称です。
種類としては、心血管系疾患・高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病などです。
このうち喫煙は日本の男女を合わせた死亡数のリスク因子としてトップになっています。心血管病とがん、呼吸器疾患の原因になっています。
次に高血圧が死亡因子の第2位になっています。
高血圧は動脈硬化を引き起こし、日本における死因は、動脈硬化による病気(心疾患・脳血管疾患)の2つを合わせると、がんを抜いて第1位になります。
動脈硬化は、高血圧などで血管が傷つき、血管が硬くなり、血管壁が厚くなって、そこに血栓が形成されることによって心疾患や脳血管疾患を引き起こします。
○心血管系疾患の危険因子
・高血圧
・脂質異常(高コレステロール血症、低HDLコレステロール血症)
・糖尿病
・肥満(特に内臓脂肪)(メタボリックシンドローム)
・喫煙
・慢性腎臓病
・心血管病の家族歴
・高齢(男性60歳、女性65歳以上)
○高血圧
・日本の高血圧者は約4000万人
・30、40代の高血圧者では、8〜9割が未治療
・高血圧者全体のうち、半数は管理不足
と言われています。
心血管病の発症を防ぐためにも、積極的に血圧を下げることが大切です。
高血圧の要因は、
遺伝的体質に、様々な環境要因が加わって発症すると考えられています。
主な環境要因としては、
・喫煙
・食塩
・糖尿病
・肥満
・ストレス
・アルコール
・運動不足
などです。
<こんな人は要注意!>
・熱い風呂に入るのが好きな人:気温の急激な変化で血圧が上昇
→ぬるめのお湯(42度以下)に入りましょう。
脱衣所を暖かくしておきましょう。
・怒りっぽい・神経質:ストレスがたまると血圧が上昇
→定期的に運動するなどして、ストレスをためない生活をこころがけましょう。
・運転をよくする:ドライブ中は30〜40mmHg血圧が上昇
→ゆっくり安全運転を心がけましょう
<高血圧の分類>
<高血圧治療の目的>
<食事療法>
・カロリーを控えましょう
糖質と脂質の摂取を減らしましょう。
・塩分摂取量を控えましょう
1日6g未満を目指しましょう。
・栄養のバランスを考えましょう
バナナやトマト、ほうれん草などカリウムを多く含む果物や野菜を積極的に摂りましょう。
※腎臓病のある人はカリウムの摂り過ぎに注意が必要です。
<運動療法>
適度な有酸素運動は血液の循環を良くして、血圧を下げる効果があります。
ウォーキングや水中ウォーキング、サイクリングなど、軽く息が弾み、汗ばむ程度の運動を1日30分以上、できるだけ毎日行うのが良いとされています。
<薬物療法>
かかりつけ医と相談しましょう
<高血圧を治療すると>
高血圧を治療すれば、心臓病や脳卒中の危険性は低下します。
上の血圧が10〜20mmHg、下の血圧が5〜10mmHg下がると、
・脳卒中は30〜40%
・虚血性心疾患は15〜20%
リスクが減ります。
<脂質異常症の診断基準>
男性、女性ともに高コレステロール血症は増加
約40年の間に、男性で9倍、女性で8倍になっています。
特に女性は更年期以降コレステロールが上がりやすくなります。
<脂質管理目標値>
<高脂血症の治療方法は?>
高脂血症治療の基本は、食事療法と運動療法による生活習慣の是正です。
効果不十分の時には薬物療法を追加します。
<食事療法>
:第一段階〜総摂取エネルギーと栄養配分を適正化する〜
・適正エネルギー摂取量=標準体重×25〜30kcal
標準体重=[身長(m)]×[身長(m)]×22
・栄養配分
炭水化物:60%
脂肪:20〜25%
タンパク質:15〜20%
コレステロール:300mg以下
食物繊維:25g以上
アルコール:25g以下
その他(ビタミンやポリフェノールを含む野菜、果実を多めに)
・高コレステロール血症(高LDL-C血症)
脂質の制限の強化、コレステロール摂取量の制限、脂肪酸の種類の配分
・高トリグリセライド(中性脂肪)血症
単糖類の制限、禁酒、炭水化物の制限
<運動療法>
運動強度:最大酸素摂取量の50%
量・頻度:1日30分以上(できれば毎日)、週180分以上
種類:速歩、社交ダンス、水泳、サイクリング
<薬物治療>
かかりつけ医と相談しましょう
○糖尿病
糖尿病は高い血糖値が続く病気です。
食物から得たブドウ糖が、体内で有効に利用されずに血液の中に多くとどまって、血液中のブドウ糖(血糖)の量が過剰になってしまう病気のことです。
この状態を高血糖といい、主にインスリン作用不足などによって起こります。
糖尿病には大きく2種類に分類されます。
糖尿病患者の95%以上は2型糖尿病です。
・1型糖尿病:膵臓の細胞が破壊されて、インスリンを分泌することができなくなり発症します。
幼少期〜10代で発症することが多く、病態が進行するとインスリンを毎日注射しなければなりません。
・2型糖尿病:膵臓から十分な量のインスリンを分泌することができなくなったり、体内でのインスリンの働きが悪くなって発症します。
成人してから発症することが多く、わが国の糖尿病患者の95%以上は2型糖尿病です。
※日本人(アジア人)の膵臓は、長年の食文化の違いや遺伝的な違いなどにより、欧米人に比べてインスリンを分泌させる働きが弱いことが明らかになっています。
<2型糖尿病の進行>
2型糖尿病は、診断される前からすでに進行しています。
糖尿病と診断されて時には、すでに耐糖能異常や空腹時血糖異常を発症しています。
診断を受けたら直ちに治療に取り組みましょう!
<2型糖尿病の自覚症状>
初めはほどんど自覚症状はありません。
高血糖が続くと、初めて特徴的な症状がみられることがあります。
(早期では症状がないままゆっくりと進行することもあり、経過は患者さんによって異なります。)
症状に気付いた時は、すでに合併症が起きている可能性があります!
・いつもより喉が渇く
・おしっこの回数が多くなる
・疲れやすい
・目がかすむ
・手足の感覚が鈍い
<糖尿病の合併症>
糖尿病が進行すると合併症が発症します。
糖尿病合併症は、生活の質(QOL)を次第に悪くし、命に関わることがあります。
小血管障害:網膜症、歯周病(感染症)、腎症、神経障害
大血管障害:脳梗塞、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、足病変
<糖尿病の判定区分>
<糖尿病の治療>
糖尿病治療の目的は、合併症を予防することです。
生活習慣病は文字通り「生活習慣からくる病気」です。
今回講義したことを頭に置き、
最初は煩わしいかもしれませんが、健康に留意することで、生き生きとした生活をいつまでも続けていただけたらと思います。
終わりに
講座の中休みに、管理栄養士の吉江さんが作ってきてくださった健康ドリンクを参加者の皆さんに飲んでいただきました。
オリジナルレシピも希望者の方に配布し、好評でした。