本コラム第75回を読んだ患者さんが、「塩分の過剰摂取→体内の塩分濃度を一定にするため塩が水を引き寄せて体の水分が増える→血液量も増える→たくさんの血液を押し出すため血圧が上がる」という理屈が分かって、「塩分を控える気持ちが湧いた」と言ってくれました。
血圧が高いと、血管は圧力に抵抗して次第に硬くなります。
「動脈硬化」の始まりです。
「弾力(しなやかさ)が失われると圧力を吸収できなくなるため、さらに血圧が上がる→硬くなろうと動脈の壁が厚くなる→内腔が狭くなる→細い動脈を押し通して、臓器に血液を届けるためにさらに血圧が上がる→ますます血管に負担がかかって動脈硬化が進む」。
悪循環が加速していきます。
南米のアマゾンには生活圏に食塩がなく、1日の塩分量が1g以下で暮らす民族がいるそうです。
その民族は、年を取っても血圧は上がらないそうです。
なぜなら、「塩分過剰→高血圧→動脈硬化→さらに高血圧」という悪循環の最初の一歩がないからです。
ということは、幼少期から減塩に取り組むと、将来血圧が上がらず、動脈硬化も進まず、結果として脳卒中や認知症、心筋梗塞を予防できるのです。
実は、動脈硬化は既に10代から始まっているといわれています。
本コラム第13回で、数百年前の名医が残した「人は血管と共に老いる」という言葉を紹介しました。
人生100年時代の長い生涯、血管を大事にするためには、幼い頃からの「薄味」が大切です。
慣れ親しんだ濃い味付けが好きなことは分かりますが、自身の健康のため、そして愛する家族と末永く健康に暮らすためにも、みんなで減塩に取り組む意義はとても大きいのです。
このコラムを読み終わったら、隣で目玉焼きに塩かしょうゆのどちらをかけるか迷っているお子さんに、物知り顔でここに書いた話をしてあげてください。
(2023年2月21日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)