健康七箇条の第一条『しっかり食べる』の解説を続けます。
積極的にとるもの
・たんぱく質
・野菜、果物
とりすぎに注意
・塩分
・太めの人の糖質と脂質
・アルコール
今回は、前回に引き続いて『塩分』です。
第3回 健康七箇条…の前の確認作業 前編 お示しをしました
日本人の健康に影響する死因原因と要介護になった原因の表を改めて見てみましょう。
死因 | 死亡数(人) | |
第1位 | 悪性新生物(癌) | 373,000 |
第2位 | 心疾患 | 198,000 |
第3位 | 肺炎 | 119,000 |
第4位 | 脳血管疾患 | 109,000 |
第5位 | 老衰 | 92,000 |
第6位 | 不慮の事故 | 38,000 |
第7位 | 腎不全 | 25,000 |
第8位 | 自殺 | 21,000 |
第9位 | 大動脈瘤および解離 | 18,000 |
第10位 | 肝疾患 | 15,000 |
日本における死因順位別死亡数 厚生労働省 平成28年人口動態統計
介護が必要となったおもな原因 厚生労働省 平成28年国民生活基礎調査
死因のうち、心疾患、脳血管疾患、腎不全、大動脈瘤および解離と、要介護の原因のうち、認知症、脳血管疾患、心疾患は、すべて高血圧によって引き起こされる動脈硬化がもっとも大きな原因です。
すなわち、高血圧のために、毎年多くの人が亡くなって、多くの人が倒れて要介護状態となっていると言えます。
高血圧対策が健康づくりの大きな位置を占める理由なのです。
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そして高血圧の始まりは『塩分過剰』です。
どうして塩分と血圧がそんなに関係あるのか、せっかくの医良人コラムですので、塩分過剰によって『高血圧になる仕組み』についてもお勉強しておきましょう。
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塩分の過剰摂取
⇒ 体内の塩分濃度を下げて一定にしようと自然に体は水分を蓄える
⇒ 体内の水分が増えると血液量も増える
⇒ 心臓は多くの血液を押し出すために血圧を上げなくてはならない(高血圧)
⇒ 血管に圧力負担がかかるため、じょじょに動脈硬化が進行する
⇒ 動脈が硬く細くなると、大事な臓器に血液を届けるために、さらに血圧を上げる
⇒ さらに血管に負担がかかってどんどん動脈硬化が進行する…
いかがでしょう?
途中から悪循環のスパイラルに陥っていましたね。
血圧を下げるために、みなさまタマネギの皮の健康食品を食べたり、さまざまな知恵や工夫を凝らしていますが、一番単純な対策は最も上流にあたる『塩分を適正量』にするという単純な答えが最も初歩的であり、効果的な血圧対策であることがお分かりいただけると思います。
前回お伝えをいたしました、塩分摂取量が1日1g未満のブラジルアマゾンの奥地のヤノマモ族などは、年を取っても血圧は上がらないそうです。
すなわち、塩分過剰⇒高血圧⇒動脈硬化⇒さらに高血圧…
という悪循環の最初の一歩目がないからなのです。
ということは、「若い」血圧がまだ上がっていない低い時期から、それこそ幼少期から塩分の減量にとりくむと、長期にわたって血管への負担を減らすことができ、将来高血圧になりづらくなるということです。
若いうちにうす味に慣れておくと、お年をとってからもその習慣が続きやすいですよね。
いったん濃い味に慣れてしまったものをうす味に修正することは苦労を伴いますが、最初からうす味の習慣であれば、そういうものなのだと体が自然に覚えていて、一生涯その習慣が続きます。
ご家族みんなで減塩生活に取り組む意義はとても高いのです。
若い人たちだけでなく、もちろん、すでに高血圧の治療中の方にも減塩による血圧の低下作用ははっきりと確認されています。
しかし、高血圧の患者さんで、高血圧ガイドラインの1日あたりの塩分6.0g以下の推奨目標値を達成できているのはわずか3%に過ぎないと言う報告があります。
また、日本の国民健康・栄養調査の結果によると、「塩分制限をしている」と答えた人でも、実際には平均1.6gの食塩を減らしているのにとどまっていました。
より上手に減塩が進むように、塩分を減らすコツをまとめてみました。
○塩分を体に入れない工夫
最初から体に入れないことが大原則です。
食品
① 好きな漬物や塩蔵食品などは食べても良いのですが、好きなだけ食べるのではなくて、ひと口ふた口とへらして、味見程度を心がけて見ましょう。
② 大皿ではなくて、先に食べる分を一人分ずつ取り分けておくのも良い心がけです。
③ 漬物は、塩漬けではなく、ぬか漬けや酢漬、からし漬けなどに変更する。
④ 昔ながらの保存食である梅干し、漬物、干物、味噌味など塩分の多いものを認識して控える。
⑤ 外食、カップラーメン、ハム、ソーセージなどの加工食品はなるべく控える。
調味料
① 醤油、塩、味噌の三大塩分調味料を少しずつ減らすよう心がける。
② 直接かけない。お醤油などは直接つけるよりも、スプレー式のものなどが良いでしょう。
③ 調理の段階で先に味付けは済ませておいて、食卓には調味料のビンを置かない。
④ 味噌汁は具だくさんにして、素材の味を味わう。野菜も多く取ることができます。
⑤ 減塩製品を利用してみる。
⑥ 塩分の代わりに酸味、出汁、スパイスで味付けをする。
!ポイント!
・総塩分量=塩分濃度×食べる量
当たり前のことですが、見落としがちのことです。
これは私が患者さんに説明するときによく使っている言葉なのですが、今回記事を書くのにあたって調べていると、国立循環器病研究センターのホームページにも同じ説明が書かれていました。
せっかくうす味にしても、食事量が多くなれば、掛け算ですので、けっきょく塩分の総量は増えてしまいます。
うす味×適正食事量 を守ることが大切です。
適正食事量を心がけることによって、適正体重に近づけることができると、より降圧効果は大きくなります。
○体内の塩分を減らす工夫
① カリウムやマグネシウムを摂る。
カリウムやマグネシウムはナトリウム(塩分)を体外へ排出する働きがあります。
第11回、第12回でご説明をしました野菜や果物はカリウムが多くて良いです。
精製をしていない天然塩はマグネシウムが含まれるので、精製塩よりもよいかもしれません。
② 運動
汗をかくと塩分が出ていきます。
血管の弾力も保てて動脈硬化対策にもなります。
肥満を予防する効果もあります。
□
減塩のために参考になる資料を2つご紹介します。
日本高血圧学会
国立循環器病研究センターのかるしおレシピ
さて長らく、塩分についてご説明をしてきました。
最後に、どの年代層が塩分摂取が多いのかを見てみましょう
総数 |
20-29歳 |
30-39歳 |
40-49歳 |
50-59歳 |
60-69歳 |
70歳以上 |
9.9g |
9.3g |
9.5g |
9.4g |
9.9g |
10.5g |
10.0g |
平成28年 食塩摂取量の平均値(年齢階級別,成人1人1日当たり)平成28年国民健康・栄養調査結果の概要 - 厚生労働省
やはり、ご年配層の方が塩分量が多いですね。
濃い味付けがお好きなことは分かりますが、ご自分の健康のため、そして愛するご家族と末永く健康で暮らすためにも減塩に取り組んでみましょう。
お食事を作る方のご協力がとても重要です。
その日一日みんなが好きな味付けの美味しい食事を食べることも幸せだと思いますが、家族の健康を長い目で見ていただいて、少しずつでもうす味に変化できるように工夫をお願いいたします。
塩分6gなんて、今の半分。現実的ではない!
と感じた方もいらっしゃると思います。
それでも良いのです。
禁煙などと同じで、少しでも知識として知っておいていただくことが大切なのです。
ある時、何かのきっかけで、減塩や禁煙などが、ご自分やご家族の健康のために重要な意味があることに気づいていただける時が来るものです。
私達は、それまで情報提供を続けます。
そして、いざ実行をしようと思った時には、どこよりも信頼性と利用性の高い、このWebサイト『信州健康の森 まんまる◎広場』を思い出していただき、参考にしてください。
まとめ
塩分は3~6gを目標に、長野県民の老若男女みんなで減量に取り組みましょう。
塩分過剰は、高血圧から動脈硬化を起こし、その結果、命や寝たきりにつながるさまざまな病気を引き起こす
幼少期、若いうちから減塩、うす味に取り組むと、年をとってからの高血圧予防効果が大きい
減塩の工夫を知っておいて、あとは実践と継続する。
( 健康七箇条 第七条:正しい知識を持って、実践、継続する )
すでに平均寿命の長い長野県民が塩分摂取を控えると、もっともっと健康寿命を延ばせそうなことが直感的にお分かりいただけたと思います。
おまけ
一日塩分摂取量
ご自分の塩分摂取量をお知りになりたい方は、かかりつけ医の先生にご相談をしてみましょう。
おしっこから一日の塩分摂取量を推定する検査を受けることができます。
ご相談をしてみてください。
ナトリウムから塩分の計算
平成27年4月からカップラーメンなどの食品には塩分量の表示が義務づけられるようになりました。
しかし、ナトリウムから塩分量へのおよその換算式も覚えておいて損はありません。
⾷塩量(g)=ナトリウム量(mg)×2.5÷1000
①ナトリウム量に2.5(厳密には2.54)を掛けます。
②gとmgの単位が違うため、①の答えを1000で割ります。
計算が苦手な方は 簡単な自動計算機があります。
CASIO keisan ナトリウム量(mg)から塩分相当量(g)を計算する
熱中症対策
熱中症は、周囲の環境温度が高いことが、すべての原因です。
気温が高いと、汗を出して体温を冷やそうとします。
大量の汗をかくことによって、体内の水分やミネラルバランスがくずれると熱中症の症状がより強くなります。
ここで大切なポイントは、今回ご説明しました「高血圧も動脈硬化も脳梗塞や心筋梗塞も、すべては塩分過剰から始まる」と同じように「熱中症は高温環境から始まり」ます。
病気予防や健康対策は原因の根本、大元に遡って対策することが大切です。
まずは涼しい環境調整を心がけることが先決です。
涼しい環境下にいれば、汗もかかないため、塩分を積極的にとる必要もありません。
もちろん、屋外作業や運動なので、どうしても汗が出る際には、水分と塩分を摂りましょう。
参考リンク:病気の基礎知識 熱中症
:応急手当 熱中症
日本人の食事摂取基準 厚生労働省
国民健康・栄養調査 平成28年 厚生労働省
食生活指針 文部科学省、厚生労働省、農林水産省
日本高血圧学会 減塩委員会
国循のかるしおレシピ
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健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条①
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条②
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条③
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条④