どんな病気
食物アレルギーは食物を食べることによってアレルギー反応が引き起こされて、全身にさまざまな症状が現れる病気です。
乳児では約10%、3歳児では約5%、学童期以降が1.3~4.5%程度の人が、何かしらかの食物アレルギーをもっていると推定されています。
参考:「食物アレルギーの診療の手引き2017」
「食物アレルギーの診療の手引き2017」検討委員会 より
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即時型(急性)食物アレルギーは、成長する過程で発症する場合もみられますが、成長とともに治癒(耐性獲得)するケースが多く見られます。
即時型の食物アレルギーでは、原因食物の摂取後、通常2時間以内に、蕁麻疹や湿疹、下痢、嘔吐、咳、鼻水、呼吸困難などの症状が起きることがあります。
ショック症状(アナフィラキシーショック)を起こして、まれに死に至ることもあります。
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原因
食物アレルギーは、食物に含まれるたんぱく質などが原因です。
たんぱく質が多い食物が原因になりやすいという訳ではなく、アレルギーを引き起こしやすい構造のたんぱく質と、そうでないたんぱく質があります。
人によって原因となるたんぱく質や反応を引き起こす量が異なります。
また、同じ人が同じ食物を食べても、体調によって反応のあらわれ方が異なることがあります。
即時型食物アレルギーの原因は、日本では、鶏卵、牛乳、小麦が3大主要原因食品物といわれており、全体の約70%を占めています。
ピーナッツ、果物類、魚卵、甲殻類が続いて、上位10品目で全体の90%を占めています。
原因食物の内訳
日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版」より引用
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即時型食物アレルギーの原因となる食物は年齢によっても大きく異なります。
鶏卵、牛乳は乳幼児期に多くみられますが、その後は減少し学童~成人期には甲殻類、ソバ、果物類などが増加してきます。
小麦は乳幼児期から成人期までみられます。
年齢別 新規発生の原因食物(各年齢群において5%以上を占めるものを記載)
日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版」より引用
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症状
即時型食物アレルギーではさまざまな症状が現れますが、とくにじんましんや湿疹、かゆみなど皮膚の症状が多くみられます。
呼吸困難や血圧低下、意識を失うなどのアナフィキラシーショックを起こすと、命にかかわる場合もあり注意が必要です。
【即時型食物アレルギーの症状】
皮膚・粘膜症状 |
食物アレルギーの症状の中で最も多い ・じんましん、かゆみなど ・口の中のイガイガ感、唇の腫れなど ・目の充血、目の周りが腫れる |
呼吸器症状 |
皮膚・粘膜症状に次いで多い ・くしゃみ、鼻水、鼻づまり ・咳、のどの違和感・しめつけ感、ゼーゼーする、呼吸困難など |
消化器症状 |
・腹痛、吐き気、嘔吐、下痢など |
全身性症状
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※命にかかわる場合もあるので注意が必要 ・複数の臓器に症状が出る(アナフィラキシー) ・血圧が下がる、意識を失うなどの症状(アナフィラキシーショック) |
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即時型食物アレルギーでは、原因となる食物を食べてから症状が現れるまでの時間は、通常2時間以内といわれていますが、場合によっては4~6時間以上過ぎてから症状が出ることもあり注意が必要です。
一般的に、アレルギー症状は体調などが不安定な時に現れやすい傾向があります。
疲れやストレスがたまっている時、睡眠不足、風邪をひいた時などは注意が必要です。
ふだんから食生活に気を配り、安定した状態を保つように心がけましょう。
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検査
主に以下の検査を行います。
問診
詳しい問診によって、原因となっている食物を推定することが診断の第一歩です。
医療機関では以下のことを伝えましょう。
• 原因と思われる食べ物、食べた量
※食べた物を原材料単位で記録していると参考になります。
• 食べた時に出た症状
• 時間経過 「何分(何時間)後に」「どのくらい続いたか」
• 治療中の病気、現在服用中の薬
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血液検査
◯IgE抗体
原因と思われる食べ物に対して、IgE抗体の値が高いかを調べる検査です。
※ IgE抗体:免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質の一種
ただし、IgE抗体の値が高くても、かならずしも症状が出るとは限りません。
逆に、IgE抗体の値が低くても症状が出る場合もあります。
この検査の値だけで、食物アレルギーの診断を確定するものではありません。
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◯好酸球数
好酸球は血液中にある白血球の一種で、アレルギー反応があると増加します。
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無用な食事制限とならないためにも、正しい診断のためには、実際に食べた時の症状を調べたり、食物負荷試験などを行うことが必要になります。
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皮膚テスト
原因と思われる食べ物の成分を、皮膚につけて刺激して、皮膚の反応をみる検査です。
この検査で皮膚の反応が強い場合には、その食べ物に対してアレルギーをもっている可能性が高くなりますが、食物アレルギーの診断を確定するものではありません。
また、強いアレルギーをもつ人の場合には、全身に反応が起きる危険があり注意が必要です。
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食物負荷試験
原因と思われる食べ物を食べてみて、実際に症状が出るかどうかを調べます。
ごく少量から始めて、少しずつ量や濃度を増やしながら食べていく方法が一般的です。
食物アレルギーの診断において、最も確実な手段といえます。
診断をするために行われる場合と、それまで食べられなかったものが年齢によって食べられるようになったかどうか(耐性獲得)を調べるために行われる場合があります。
食物負荷試験は、安全に、正しく行うことが大切です。
症状が現れた際に緊急処置ができる、専門医のいる医療機関で検査を受けましょう。
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治療
症状が強いとき
呼吸が苦しい、ぐったりしている、意識状態が悪いなどの場合には『アナフィラキシーショック』である可能性があります。
ただちに救急車を呼びましょう。
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基本的な考え方
乳児・幼児期の食物アレルギーは年齢が上がると、『耐性』とよばれて、症状が出なくなることがあります。
即時型食物アレルギーの場合は、3歳までに50%、小学校入学まで80%ほどが耐性を獲得します。
無用な食事制限を続けないように、アレルギー専門医のいる医療機関に定期的に受診しましょう。
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食物除去療法
原因食物を食べないことが一番の対策です。
しかし、食物アレルギーの治療は、原因となっている食物を必要最小限に除去することが重要です。
栄養面からも『念のため』、『心配だから』と必要以上に除去する食物を増やさないようにしましょう。
適切な栄養指導のもと、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
専門医療期間で、血液検査や、食物負荷試験を行って食べられるようになったかを、定期的に検査を受けましょう。
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薬物療法
発症を予防する有効な薬物はありません。
症状を起こした際には、抗アレルギー薬やステロイド薬が使用されます。
症状が強く、アナフィラキシーショックが起こった際には、アドレナリンなどが使用されます。
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減感作療法
最近では「経口減感作療法」が世界的に行われ、その効果が認められるようになってきました。
「経口減感作療法」とは、卵などのアレルゲンを少しずつ与えていくことによってアレルギーの症状を起こさないようにする治療法です。
治療中に強いアナフィラキシーを起こす可能性もあり、危険も伴います。
経口減感作療法は、専門的な医療機関や信頼できる医師のもとで、適切な指導の下で受けることをおすすめします。
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ホームドクターからのアドバイス
近年、乳幼児から成人まで食物アレルギーを起こす人は増加傾向にあります。
重症になると命に関わる場合もあるため、食物中のアレルギー物質について正確な情報の提供が必要とされています。
「食品表示法」が平成27年4月1日に施行されました。
【実際に表示されるアレルギー物質】
<義務品目> 特定原材料7品目 必ず表示されるもの |
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生 |
<推奨品目> 特定原材料に準ずるもの20品目 表示が勧められているもの |
あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、 |
消費者庁 アレルゲンを含む食品の原材料表示について より引用
※ 含まれていても表示されない食品もあり、注意が必要です。
表示される加工食品
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・あらかじめ箱や袋で包装されている加工食品 ・缶や瓶詰の加工食品 |
表示されない加工食品 |
・店頭で計り売りされる惣菜 ・パンなどその場で包装されるもの ・注文して作るお弁当 ・アルコール |
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食物日誌
食事後にアレルギー症状が出現した際に、どの食物が原因物質か特定できない際には、『食物日誌』として、食事の内容を原材料単位で記録をしておきましょう。
もし、次回に同様の症状を起こした際に、原材料ごとに比較をすることで原因物質が特定できることがあります。
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即時型(急性)以外の食物アレルギー
• 口腔アレルギー症候群(OAS:Oral Allergy Syndrome )
果物・野菜等を食べることによって起きる、くちびるや・口腔粘膜の接触じんましんです。
摂取後5分以内に症状を認めることが多くみられます。
1)花粉症との交差反応
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2)ラテックス(ゴム)と交差反応がみられるタイプ
アボガド、クリ、バナナなど
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• 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)
原因食物を食べた後に、運動が加わることで、アレルギーが引き起こされることがあります。
小麦、エビ、カニなどが原因として多くみられます。
原因食物がはっきりと分かっている場合には、食べた後は2~4時間は運動を控えましょう。
もちろん原因食物を食べていなければ、運動を控える必要はありません。
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• 食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の一部で食物アレルギーが関与していることがあります。
慢性の下痢などの消化器症状、低蛋白血症、電解質(ミネラル)異常などをともなうことがあります。
鶏卵、牛乳、小麦、大豆などで頻度が高いといわれています。
アトピー性皮膚炎や慢性じんましんの原因として食物アレルギーが疑われる場合には『食物除去試験』を行います。
原因と思われる食べ物を1~2週間食べないようにして、症状がおさまるかどうかをみる検査です。
授乳中のお子さんの場合には、お母さんも原因と思われる食べ物を除去する必要があります。
症状がおさまった場合には、次に『食物負荷試験』を行います。
すべてのアトピー性皮膚炎に食物が関与しているわけではないので、無用な食物制限を行わないことが大切です。
必ず専門医による診断をきちんと受けましょう。
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「エピペンⓇ」の携帯
エピペンは、病院で処方されるアドレナリンの自己注射薬です。
アナフィラキシー症状が現れたときにただちに自分で使用します。
医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐために用います。
ただし、あくまでも一時的な補助治療薬ですので、エピペンの注射後はなるべく早期に、医師による診療を受ける必要があります。
強い食物アレルギー症状を起こしたことがある方は、医療機関で処方を受けて、エピペンを携帯しておくことをお勧めします。
一般向けエピペン®の適応(日本小児アレルギー学会:2013年)
日本小児アレルギー学会ホームページ 「一般向けエピペン®の適応」決定のご連絡 より引用
もっと調べる
参考リンク
〇食物アレルギーの診療の手引き2017」検討委員会「食物アレルギーの診療の手引き2017」
保育園や学校で症状が出た場合の対応については、医師とあらかじめ相談をして決めておきましょう。
〇 日本学校保健会 学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン
初診に適した科
小児科、アレルギー科、皮膚科、救急科
頼りになる病院
北信 | |
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東信 | |
中信 | 安曇野市 長野県立こども病院 |
南信 |
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