アトピー性皮膚炎

どんな病気

アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹ができます。

良くなったり悪くなったりを繰り返して、慢性的に続く病気です。

主に、アレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能の弱い人に見られます。

発症は乳幼児期が多く、多くの人は成人するまでに治りますが、成人後にも長引くこともあります。

 

生命が脅かされる病気ではありませんが、「かゆみ」に悩まされるためにイライラしたり、眠れなくなったりといった精神的ストレスが強く、生活の質(QOL=Quality of Life)が低下します。

治療の目標は、症状を上手にコントロールし、日常生活に負担が少ない状態を維持することです。

治療には時間がかかりますが、気長に病気と付き合いながら、根気よく治療を続けていくことが大切です。

 

原因

アトピー性皮膚炎の原因は、はっきりとわかっていませんが、体質と環境などが強く関係して発病すると考えられています。

これらは発病のきっかけであると同時に、症状を悪化させる原因にもなります。

 

     日本臨床内科医会 「わかりやすい病気のはなしシリーズ17 じんま疹・アトピー性皮膚炎Q&A」 より引用

 

【アトピー性皮膚炎を発症・悪化させる原因】

体質に関連する原因

アトピー素因

アトピー素因とは、下記のように定義されています。

1)本人または家族がアレルギー性の病気(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎など)を持っていること

2)免疫物質である「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていること。


人の体には、細菌やウイルスから体を守るため、免疫という仕組みがあります。

この免疫が過剰に働いてしまうと、気管・鼻・目・皮膚などに炎症を起こしていします。

このような体質をアトピー素因といいます。

アトピー素因は遺伝すると言われていますが、アトピー素因を持っているからといって、アトピー性皮膚炎を必ず発症するわけではありません。

生活環境によって発症しないことも多いので、生活環境を整えることが大切です。

 

バリア機能の低下:
人間の皮膚が持っているバリア機能は、外からの刺激や雑菌などの侵入を防ぎ、体内の水分を保つための機能です。

アトピー性皮膚炎の人は、そのバリア機能が弱まって、外からの刺激やアレルギーの原因物質の侵入に弱くなります。

また、乾燥肌も関連します。

 

<バリア機能低下による悪循環>
かゆい→かきむしる→バリア機能の破壊・低下→刺激物の侵入・炎症→かゆい…

 

環境に関連する原因

アレルギーに関係するもの

食べ物、ダニ、花粉、かび、ほこり、動物の毛など


アレルギー以外のもの

• 繰り返しかくことによる刺激

• 汗

• 皮膚の乾燥

• 洗剤や化粧品などの化学物質の刺激

• 病状に合わない肌の手入れ

• ストレスなどの心理的な要因

 

症状

主な症状は強いかゆみと湿疹です。

湿疹の特徴

• 赤みがある

• じゅくじゅくした水分を含んだ湿疹

• 乾燥して白いフケのようなものがおちる

• かくことを繰り返したために、皮膚が硬くごわごわ厚くなる

また、激しいかゆみをともなう湿疹はどの部位にも現れますが、左右対称に発症することが多く、年齢によって現れやすい場所が異なるのも特徴のひとつです。

 

年齢による症状の特徴

乳児期

主に顔や頭に赤い発疹ができて、首やひじのくぼみ、手首・足首などにも現れます。


幼少児期

首の周囲、ひじやひざの裏などの関節部に多く、皮膚の乾燥が目立ってきます。


思春期・成人期

顔、首、胸、背中、ひじなど上半身に強く現れる傾向があります。

 

症状による影響

悪循環

湿疹がかゆいのでかく → 皮膚が傷つく → 傷口から雑菌が侵入して、湿疹が悪化する。

 


        日本臨床内科医会 「わかりやすい病気のはなしシリーズ17 じんま疹・アトピー性皮膚炎Q&A」より引用

精神的影響

顔や手など目立つ部分の症状がひどくなると人前に出るのを避けるようになり、社会生活に支障をきたす場合もあります。

しつこいかゆみのために、精神的ストレスを訴える場合も少なくありません。

また、ストレスのために皮膚をかいてしまい、湿疹がさらに悪化する要因となります。

その他のアレルギー性疾患

同時にみられる疾患として、喘息やアレルギー性鼻炎アレルギー性結膜炎など他のアレルギー性疾患があります。

合併症
伝染性膿痂疹(とびひ)、白内障、網膜剥離などもみられる場合があります。

検査

パッチテスト

アレルギーを起こしている原因(アレルゲン)を知るための皮膚検査。

血液検査

抗原抗体反応やIgE抗体量、TARC、炎症の程度などを調べます。

検査をしても、必ずしもアレルゲンを特定できないこともあります。

治療

治療の主な柱は、

①薬物療法

②スキンケア

③症状を悪化させる原因を取り除くことの3つです。

① 薬物療法

ステロイド外用薬

湿疹の治療薬の基本薬になります。

ステロイド外用薬は、過剰な免疫反応を抑えて、炎症を鎮める効果があります。

効果や強さに応じて5つのランクに分類され、症状・部位・年齢などによって使い分けられています。

最初は1日2~3回使用して、症状が改善すると、塗る頻度や強さを落としていきます。

• 皮膚に刺激を与えないように、すり込まないように塗りましょう。

• 同一部位へのステロイド外用薬の使用が1ヶ月以上に及ぶ場合には専門医に相談しましょう。

• 中途半端な治療は、かえってステロイドの総使用量が増えると言われています。

適切な強さのステロイド薬の選択をして、使用方法を守ってください。

• かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、免疫抑制薬なども処方されます。

• 皮膚に感染症がある場合には、抗生物質などが必要となることもあります。

• 2018年からアトピー性皮膚炎の注射薬が使用できるようになりました。

自己注射製剤もあります。

使用に関してはいくつか制限がありますので、皮膚科専門医にご相談ください。

② スキンケア

弱まっている皮膚のバリア機能を高めるため、洗浄と保湿が重要です。

【洗浄】

• 体を洗う際は、洗浄料をしっかりと泡立てて洗い、強くこすらないようにしましょう。

• 素手で優しく洗いましょう。

洗いながら掻いてしまわないように、意識しましょう。

• 洗い終わったら、洗浄料成分をしっかりと流しましょう。

【保湿】

洗った後は保湿剤を用い、しっかりと保湿しましょう。

入浴後5分以内の使用は、とくに効果が高いといわれています。

保湿剤

アトピー性皮膚炎の予防薬であり、治療薬にもなります。

• 保湿剤は、刺激の少なく使用感の良いものを選びましょう。(迷う場合には、医師に相談してみてください)

• 保湿剤は、たっぷりと使い、優しく広く伸ばす様に塗ります。

• 塗る回数が多いほど効果は高くなるので、一日の間でこまめに塗ります。

• ステロイド外用薬と併用する場合には、ステロイド外用薬を塗る時間の合間に塗ります。

 

③ 症状を悪化させる原因を取り除く

症状を悪化させる原因には、食べ物やダニなどのアレルゲン以外にも、普段身に着けている衣服や化粧品、皮膚を洗いすぎてしまうといった行動パターンなど、さまざまなことが考えられます。

それらの中から丹念に症状と関係していることを見つけて対策を立てていきます。

大切なことは、それぞれの人によって治療法が異なるということです。

それぞれの状態に合った治療を続けることと、きちんと医療機関で診察と指導を受けて、気長に治療・予防をすることが症状改善のポイントです。

 

精神的なストレスから症状が悪化することもあるため、ストレスの解消も大切です。

また、「早く治そう」と焦らずに、心に余裕を持つことも、ひとつのコツといえます。

治療は、煩わしくても日常生活に大きな支障がないのであれば、うまくいっていると考えましょう。

ホームドクターからのアドバイス

アトピー性皮膚炎は「現代病」とも言われ、年々患者数が増えています。

繰り返し湿疹やかゆみを感じる場所がある場合には、早めに医師や専門家に相談してみましょう。

 

予防のポイント

1.衣類…下着はなるべく木綿製のものや柔らかいものを選び、洗濯時には洗剤が残らないようにします。

2.入浴…汗をかいたら早めにシャワーで洗い流します。

体はナイロンタオルなどで強くこすらずに、せっけんの泡で軽く洗い、十分に洗い流します。

お湯の温度はぬるめにし、入浴後は保湿剤などで手入れをしましょう。

3.寝具…枕カバーやシーツは柔らかいものを選び、布団やまくらは日光に当てて干して、掃除機をかけます。

4.室内…こまめに掃除をしたり、換気をよくするなど、ハウスダストやダニなどを減らします。

絨毯やぬいぐるみは避けましょう。

乾燥にも注意が必要です。


5.その他

爪は短く切っておきましょう。

汗をかいたら早めにタオルを当てて吸い取ります。

化粧品の多用は避けて、髪の毛が顔や首筋にかからないようにします。

アクセサリー類を身に着けるのは控えましょう。

生活リズムを整えて、ストレスをためないようにしましょう。

食事は香辛料などの刺激の強い食べ物や、アルコールは適量にします。

食物アレルギー

食物アレルギーが関与することもありますが、除去療法は自己判断でむやみに行わずに、きちんと専門家に相談しましょう。

とくに小児の場合には、成長のために大切な栄養が不足する原因になってしまいます。

 

アトピービジネス

ステロイド外用薬に否定的な考え方もありますが、専門家の指示に従って、使う量や強さ、期間、部位に気を付けて使用すればとても有効なお薬です。

心配される副作用も正しく使用すれば問題になることは少ないといわれています。

アトピービジネスと呼ばれる健康食品や健康機器の販売を行う商業的な団体が多く存在します。

試してみる前に、かかりつけ医に相談をしてみましょう。

まずは医療機関で標準的な治療を受けることが大切です。

もっと調べる

参考リンク

日本医師会 健康の森 知って得する病気の知識 アトピー性皮膚炎

日本臨床皮膚科医会

日本臨床内科医会 わかりやすい病気のはなし じんま疹・アトピー性皮膚炎Q&A

慶応義塾大学病院 KOMPAS アトピー性皮膚炎

初診に適した科

皮膚科・小児科・アレルギー科

頼りになる病院

かかりつけ医を持ちましょう。
まずはお近くのかかりつけ医の先生にご相談ください。
北信

飯山市 飯山赤十字病院

長野市 篠ノ井総合病院

東信

上田市 信州上田医療センター

中信

松本市 まつもと医療センター

松本市 信州大学医学部附属病院

松本市 城西病院

池田町 あづみ病院

大町市 市立大町総合病院

南信

飯田市 飯田市立病院

駒ヶ根市 昭和伊南総合病院

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