信州大学医学部 脳神経外科学教室 監修
□
死亡の原因疾患 第4位
介護が必要となった原因疾患 第2位
どんな病気
脳の血管が詰まる(脳梗塞)か破れる(脳出血)ことによって、脳に血液が届かなくなったり、脳が圧迫されたりして、脳の神経細胞が損傷を受ける病気です。
脳の神経細胞が損傷されると、麻痺や言語障害、意識障害などの症状が現れます。
□
発症後、時間の経過とともに脳へのダメージは大きくなるため、早期に治療を開始することが大切な救急疾患です。
□
出典:日本脳卒中報告書2018「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握」より
信州メディビトネットで作図
□
原因
分類 | 脳の血管 | 状態 |
脳梗塞 | 詰まる | 脳の血管が詰まったり、狭くなったりして血流が悪くなり、脳細胞が損傷を受ける。 |
脳出血 | 破れる | 脳の中の細い血管が破れて出血して、脳細胞が損傷を受ける。 |
くも膜下出血 | 破れる | 脳の表面の太い血管にできたコブ(動脈瘤)が破れて、くも膜の下に出血し、脳細胞が損傷を受ける。 |
□
脳卒中を起こす危険因子
• 高血圧
• 糖尿病
• 高脂血症
• 肥満
• 喫煙
• 加齢
□
症状
脳卒中の症状はさまざまですが、共通している特徴は「突然生じる」ことです。
□
脳梗塞・脳出血
• 片方の手足・顔半分の麻痺、しびれが起こる
• 呂律が回らない、言葉がでない、他人の言うことが理解できない
• 立てない、歩けない、フラフラする
• 片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける
• 激しい頭痛がする、めまいがする、吐き気がする
□
くも膜下出血
• 突然起こる 今までに経験したことのない激しい頭痛、突然バットで殴られたような頭痛
• 吐き気、嘔吐
□
検査
頭部の画像検査
CT・MRIで、脳梗塞や脳出血の有無、脳の血管の状態などを検査します。
□
その他
血液検査、心電図、心エコー、頚動脈エコー検査などを行います。
□
治療
発症後、早期の治療が救命や後遺症を抑える鍵になります。
とくに、脳梗塞の場合は発症後4.5時間以内・8時間以内にのみ受けられる治療があるため、迅速な受診が重要です。
脳梗塞 | 薬物療法 | 血液の固まり(血栓)を溶かす薬(血栓溶解薬) 血栓をつくる血小板の働きを抑える薬(抗血小板薬) 血液の固まりができるのをおさえる薬(抗凝固薬) 脳のむくみ・腫れを改善する薬(抗脳浮腫薬) |
手術療法 | 動脈硬化によって厚くなった血管の壁を切除したり、閉塞・狭窄した血管を他の血管につなぐ手術を行います。 | |
カテーテル治療 | 血管の内側に管を通して、血栓が詰まっている箇所の近くで血栓溶解薬を注射したり、金属の網で血栓を回収したりします。 | |
脳出血 | 薬物療法 | 血圧を下げる薬(降圧剤) 脳のむくみ・腫れを改善する薬(抗脳浮腫薬) |
手術療法 | 出血が大量で、生命の危機がある場合は、血腫を取り除く手術を行います。 | |
くも膜下出血 | 手術療法 | 破裂した脳動脈瘤はもう一度出血(再破裂)しやすく、とくに24時間以内が要注意です。 再破裂を防ぐために脳動脈瘤への血流を止める手術を行います。 開頭術と血管内カテーテルによる治療法があります。 |
□
リハビリテーション
手足の麻痺や言語障害などが認められた場合、機能を回復させるためのリハビリテーションを行います。
理学療法・作業療法・言語療法などがあり、後遺症の程度を問わずなるべく早期に始めることが望ましいとされています。
□
ホームドクターからのアドバイス
脳梗塞かなと思った時は
片方の手足が動かしづらい、しびれる、しゃべりづらいなどが起こった時には、脳卒中が疑われます。
とくに脳梗塞では、発症早期に血栓溶解療法や血管内カテーテル治療を行うことによって、その後の経過が大きく変わることがあります。
けっして、様子を見ることをせずに、ただちに救急車を呼ぶなどして救急病院を受診をします。
時間の節約のためにも かかりつけ医ではなく、直接救急病院を受診してください。
□
FASTー脳梗塞のサイン
脳梗塞の疑いで救急車を呼ぶ時は、脳梗塞で多くみられる、Face(かお)、Arm(うで)、Speech(ことば)の症状をチェックし、合わせてTime(発症時間)を伝えましょう。
F:かお | 「いー」と言ってもらう 顔の片側が下がったり、ゆがみがないか |
A:うで | 手のひらを上に向けて正面へ両腕を上げたままキープ 片腕が上がらなかったり、片腕が下がってしまわないか |
S:ことば | 「今日はいい天気です」(短文)と言ってみる 言葉が出てこなかったり、呂律が回らなくなっていないか |
T:発症時間 | 発症した時刻を確認して すぐに受診してください |
□
再発予防
動脈硬化の危険因子である高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙などの生活習慣病を改善することが大切です。
□
脳卒中予防のポイント
①自分の血圧を知りましょう
日頃から意識して血圧をチェックし、自身の平均血圧を把握するよう心がけましょう。
②バランスの良い食生活を心がけましょう
食事はバランスよく適切なカロリー量と、何より塩分の摂り過ぎは血圧を上昇させます。理想的な塩分摂取量は1日5~7gとされています。
家族みんなで減塩を心がけましょう。
③お酒はほどほどにしましょう
飲みすぎると動脈硬化や高血圧、糖尿病などさまざまな病気を引き起こします。
1杯または1合程度を楽しみましょう。
④適度な運動をしましょう
運動は血糖値や血圧を下げます。
ウォーキングなど、短時間でも毎日続ける習慣をつけましょう。
⑤急激な温度変化を避けましょう
寒い時期の発症率は、暑い時期の1.5倍になります。
暖かい場所から急激に寒いところへ移動すると、心臓の負担になり、血圧が急上昇して脳卒中を引き起こす危険が高まります。
⑥排便時は注意しましょう
排便時のりきみで血圧が上昇します。
部屋とトイレとの寒暖差にも注意して、りきみ過ぎないようにしましょう。
⑦リラックスする
自分なりのリラックス方法や趣味を持って、ストレスをため込まないようにしましょう。
⑧健康診断を受けましょう
高血圧、高脂血症、糖尿病などは自覚症状がないまま進行します。
気づいたときには手遅れという状況もよくあるため、定期的に健康診断を受けましょう。
また、40歳になったら一度は脳ドックを受診し、脳の健康状態を把握することも大切です。
□
もっと調べる
参考リンク
○ 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス 脳卒中
○ 日本神経学会 神経内科の主な病気 脳卒中
○ 日本脳卒中協会
□
初診に適した科
神経内科、脳神経外科、循環器内科
□
頼りになる病院
北信 | |
---|---|
東信 | |
中信 | |
南信 |
免責事項要約
当サイトは健康情報の提供を目的としており、当サイト自体が医療行為を行うものではありません。当サイトに掲載する情報については厳重な注意を払っていますが、内容の正確性、有用性、安全性、その他いかなる保証を行うものではありません。当サイトはお客様がこのサイト上の情報をご利用になったこと、あるいはご利用になられなかったことにより生じるいかなる損害についても一切の責任は負いかねます。当サイトからリンクしている他のウェブサイトに含まれている情報、サービス等についても、一切の責任を負うものではありません。