信州大学内科学第一教室 呼吸器・感染症・アレルギー内科 監修
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どんな病気
肺がんは、気管支や肺の細胞からできるがんです。
日本人の死亡原因の第1位はがん(悪性腫瘍)ですが、肺がんはその中で死亡数が第1位のがんになっています。
現在肺がんで死亡する人は年間約7万人(男性約5万人、女性約2万人)に上ります。
肺がんは他の部位に転移しやすく、進行も速い部類のがんになります。
定期的に検診を受けるなどして、早期発見を心がけることが大切です。
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原因
たばこを吸う人は肺がんになりやすい
肺がんは、たばこを吸うことが大きな原因のひとつです。
たばこの煙には、200種類以上の有害化学物質が含まれています。
たばこを吸う人は、吸わない人の約5倍程度、肺がんになりやすいといわれています。
また副流煙によって、周りの人も肺がんの危険が高まります。
• 遺伝
• 加齢
• 大気汚染
• アスベスト
【肺がんの分類】
肺がんは、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大きく分けられます。
組織分類 |
多く発生する場所 |
特徴 |
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非小細胞肺がん |
腺癌 |
肺野部 |
女性の肺がんで多い 症状が出にくい |
扁平上皮癌 |
肺門部 |
喫煙との関連が大きい |
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大細胞癌 |
肺野部 |
増殖が速い |
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小細胞肺がん |
小細胞癌 |
肺門部 |
喫煙との関連が大きい 転移しやすい |
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小細胞肺がん
小細胞肺がんは、肺がんのおよそ15~20%を占めています。
リンパ節や、脳、肝臓、骨などに転移しやすいがんです。
非小細胞肺がんよりも、抗がん剤や放射線治療の効果が得られやすいのですが、進行が早くて、治療後の再発が多いのが特徴です。
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非小細胞肺がん
非小細胞肺がんは、小細胞肺がん以外の肺がんの総称です。
腺がんや扁平(へんぺい)上皮がん、大細胞がんなどの種類があります。
発生しやすい部位や、進行の仕方、症状などはそれぞれの種類で異なります。
非小細胞肺がんのグループでは、早期がんの段階では手術を、進行がんでは抗がん剤を中心とした治療が行われます。
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症状
早期のがん
ほとんどのがんは初期には無症状です。
肺がんは検診などで偶然見つかることがほとんどです。
肺がんを早期に発見するためには、定期的な検診を受けることが重要です。
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進行がん
咳や血痰、息切れ、胸痛などの症状が出やすくなります。
症状の出たときには、肺がんが進行した状況であることが多くなっています。
他の組織に転移をすると、それぞれの臓器を障害して症状が出ます。
脳:頭痛、ふらつきなど
骨:疼痛
肝臓:肝機能障害
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検査
画像検査
肺がんが疑われる影や、リンパ節の腫れの有無、胸水の有無などを調べます。
• 胸部レントゲン(X線写真)検査
1㎝以下の病変を同定することは困難で、2㎝程度から同定することができるようになります。
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• 胸部CT検査
5㎜程度の小さな病変でも同定できます。
造影剤を使うことで、血流の有無なども分かります。
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• 頭部MRI検査、腹部CT検査、腹部超音波検査、PET検査など
がんが転移をしていないかを調べます。
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腫瘍マーカー
血液検査の一項目です。
肺がん:CEA、SCC、proGRP、NSE、シフラなど
初期のがんでは上昇しません。
進行がんでも上昇しないことも多く見られます。
進行がんの治療効果の判定や、再発や転移などを調べるときに検査されます。
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細胞診
痰の中にがん細胞があるかどうかを顕微鏡で調べます。
胸水(肺と胸膜の間にたまった液体)がある場合には、注射器で抜いて、胸水の中にがん細胞があるかを調べます。
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気管支鏡検査
細い内視鏡を気管支に挿入して検査を行います。
気管支鏡で腫瘍に近づくことができれば、組織の一部を採取して、がん細胞があるかを顕微鏡で調べます。
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治療
肺がんの治療は、主に外科的療法(手術)、化学療法(抗がん剤)、放射線治療の3つです。
手術
小細胞癌:Ⅰ期のみ
非小細胞癌:Ⅰ期~ⅢA期の一部まで
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薬物療法(抗がん剤、分子標的薬など)
抗がん剤などを用いてがん細胞を傷つけて、小さくする治療法です。
点滴薬や内服薬を使用します。
それぞれの薬剤特有の全身の副作用がでます。
進行した肺がんでは薬物療法だけでは完全に治すことは難しいため、効果と副作用の両方のバランスがとれて、日常生活に負担が少なく、うまくがんと付き合うことができる薬剤を選択することが大切です。
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放射線治療
放射線を照射してがん細胞を傷つけて小さくする治療法です。
周囲の正常組織の細胞も影響を受けるため、副反応が問題になります。
治療機器の進歩によって、なるべくがん細胞だけに焦点が集まるように工夫されています。
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小細胞がんでは抗がん剤と併用することもあります。
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ホームドクターからのアドバイス
早めに受診をしましょう
肺がんは、罹患率も死亡率も高いため、早期発見が何よりも大切になります。
咳が長引いたりして、ご自身が肺がんではないかと心配になったさいには、早めに医療機関を受診してください。
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喫煙指数(ブリンクマン指数 BI)
肺がんは喫煙歴のある人に多く発症することが知られています。
喫煙指数とは、1日の喫煙本数×喫煙年数で求められます。
喫煙歴のある方は、計算をしてみましょう。
この指数が 400を超えると、肺がんの発症率が、非喫煙者に比べておよそ5倍も高くなることが知られています。
※ちなみに600を超すと慢性閉塞性肺疾患(COPD)、1200を超えると喉頭癌の発生の危険性が高まります。
いずれにしても喫煙者の方は、必ず禁煙を考えてみてください。
がん検診
40歳を過ぎたら、年に一度は検診を受けましょう
喫煙歴の有無にかかわらず、症状の有無にとらわれずに、定期的に健康診断や肺がん検診を受けるようにしましょう。
肺がんの検診方法は主に「胸部X線検査」で行われます。
喫煙歴のある方の場合には「喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)」と組み合わせて検査をします。
肺がん検診は、40歳以上の人を対象に、自治体で検診費用の助成を行っていることが多くあります。
該当者には、行政機関から案内が届きますので、必ず検診を受けるようにしましょう。
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セカンドオピニオン
主治医の先生以外の医師の意見を聞くことをセカンドオピニオンといいます。
現在は標準的治療法と呼ばれるガイドラインが普及をしているため、治療方針には、それほど大きな違いは少ないと思われますが、各医療機関の設備や経験数、得意分野などによっては、方針が異なることもあります。
納得して治療を受けるためにも、情報収集のためにも、悔いを残さないためにも、セカンドオピニオンの利用を考えてみても良いでしょう。
参考:国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院
セカンドオピニオン
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緩和ケア
緩和ケアと聞くと、「積極的な治療はもう終わりだ」「主治医から見放された」と、とらえる方も多くいらっしゃると思いますが、今はそのようなことはありません。
がんに伴う不快な症状を少しでも軽く「緩和」して、負担をより少なく、日常生活を過ごしていくために、緩和ケアがあります。
不快な症状を軽くすることで、より積極的に、がんの治療に取り組めるため、現在ではがんと診断されて、治療が始まる早期の段階(下図B)から、緩和ケアと関わるようになってきています。
国立がん研究センター がん情報サービス より引用
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参考リンク
〇 国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス
それぞれのがんの解説 肺がん
〇日本医師会 がんに関するページ
〇 愛知県がんセンター中央病院 がんの知識 肺がん
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