本コラム第77回で、家庭血圧の平均値が135/85以上が、高血圧の基準であることを紹介しました。
「え!?上の血圧は年齢プラス90じゃないの」という方もいるかもしれません。
それは30年以上前の、しかも根拠のない数字です。
その時代には、医師がそれぞれの経験や考え方によって治療をしており、ばらつきの大きさが問題でした。
そこで、専門家が集まって、世界中の研究成果を検討して現在の標準的な治療法を示す「診療ガイドライン」が作成されるようになりました。
2000年前後から広まり、ちょうどインターネットの普及で、世界中の情報がすぐに入ってくるようになった時期とも重なります。
ガイドラインは「科学的な根拠に基づく医療」とも呼ばれ、私たちは、まずガイドラインを読んで標準的な治療法を踏まえたうえで、各医師の経験や考え方は「さじ加減」として加える2段階療法が普及しています。
冒頭の数値は「高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会)」で公表されています。
同ガイドラインには、高血圧治療中の方の血圧をどの程度まで下げるのが良いかを示した「降圧目標値」があります。
それによると、75歳未満の成人の家庭血圧の平均値は、125/75未満、75歳以上は135/85未満(下記図参照)が目標値です。
そのうえで、年齢や基礎疾患の有無、血圧が下がり過ぎて問題がないかなど、個々の患者に合わせて、かかりつけ医が判断をしてくれます。
新年の目標にしてはいかがでしょうか。
私が中学生の頃は、「イイクニ(1192年)つくろう鎌倉幕府」と覚えたのに、今の教科書は「イイハコ(1185年)」だそうですね。最新研究によって、常識も新しく変わります。
気持ちも新たに良いお年をお迎えください。
(2022年12月27日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)