前回、不摂生を減らして病気を遠ざけると、人間は120歳まで生きられるかもしれないとお伝えしました。
すると患者さん方から、「体が言うことをきかなくなったら、そんなに長生きをしたくないわ」と感想をいただきました。しかし、命の終わりがいつ来るのかは、医者はもちろん神様にも分かりません。
「寿命」に対して、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を「健康寿命」と呼びます。松本市が全国に先駆けて「健康寿命延伸都市」を宣言してから、この言葉は全国的にも広く知られるようになりました。
長野県の2015年の「平均寿命」は男性が81.75歳(全国2位)、女性が87.67歳(同1位)でしたが、16年の「健康寿命」は男性が71.11歳(同20位)、女性が74.72歳(同27位)。上位とはいえない状況です。
寿命から健康寿命を引いた差を、厚生労働省は「不健康な期間」と表現しています。先のデータだと男性はおよそ9年、女性は12年になります。
高齢化が進み「介護」問題が深刻になっている日本では、寿命の伸びよりも健康寿命の伸びが上回り、「不健康な期間」を短くすることが社会全体の課題となっています。
16年の「介護が必要になった原因」の3位は「高齢による衰弱」、4位の「骨折・転倒」、5位の「関節疾患」を合わせると30%にもなります。高齢になると「病気」と同じくらいに「体力」維持が大事になるのです。
「疲れるから」「転ばないように」「膝や腰が痛いから」と安静にばかりしていると、体力低下の悪循環に陥って要介護状態に近付いてしまいます。願っているだけではかないません。自分自身と家族のためにも、個々の意欲的な取り組みが求められています。
正しい健康知識と自覚を持って、継続的に体力づくりに取り組むことが健康寿命延伸の第一歩になるのです。
(2018年11月20日(火)付MGプレスから)