医良人コラム
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第14回 大事な細胞を減らさない

命、若さ、信用などと同じく、私たちの体にも一度失ってしまうと取り戻せないものがあります。その代表が「神経細胞」と「心筋細胞」です。
この2つは、新しい細胞に生まれ変わるための細胞分裂ができず、同じ細胞が生涯にわたって働き続けるといわれています。

すなわち皮膚や血液などと異なり、神経や心臓は、死んだ細胞を他の細胞が分裂して再生することはできないのです。
リハビリによって死んだ細胞の周りの細胞が働きを補い、「機能」としてはある程度回復しますが、死んでしまった細胞自体が元に戻るわけではありません。

細胞の数は生まれた時点が最も多く、さまざまな原因によって徐々に数が減ると、やがて臓器としての働きが保てなくなり、命の危険や機能障害という形で現れます。
第11回で紹介した要介護となった原因をもう一度確認してみましょう。
心疾患はもちろん心筋細胞の障害が原因です。神経細胞の障害が原因となる割合は高く、認知症、脳卒中、パーキンソン病、脊髄損傷、視覚・聴覚障害など半数以上が該当します。

糖尿病で要介護になるのも、合併症の末梢神経障害による足の壊疽(えそ)や切断、視神経障害による失明が原因です。
人間の生命活動に最も重要な2大臓器「脳と心臓」の細胞が蘇ることができないのは、進化の過程の間違いかもしれません。
本来の神経細胞や心筋細胞の寿命は、以前紹介した人の寿命と同じ120歳とされています。にも関わらず細胞が早く死んでしまう最も大きな原因を、読者の皆さまはもうご存知ですね?

それは動脈硬化によって血管が破れたり、詰まったりすることで細胞が酸素不足、栄養不足となり死んでしまうためです。
繰り返しになりますが、私たちが健康長寿を守るためにできることは、大事な細胞の数をなるべく減らさないように、動脈硬化対策を心掛けることが一番です。

(2019年2月5日(火)付MGプレスから)

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