本コラム第33回で紹介した「細いしめじと太いえのき」の話を覚えていますか?
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糖尿病は痛くないのになぜ治療が必要なのでしょう?
治療の目的はさまざまな合併症を予防するためです。
前回お伝えしました、すい臓がんの他に、大腸がん、肝臓がん、乳がんなど様々ながんになりやすくなります。
実は、糖尿病患者が亡くなる原因の第1位は、血管の病気ではなく、がんなのです。
皆さんがなるべく避けたい認知症に2倍なりやすくなりますし、寝たきりにつながる骨折の危険性も同じく2倍に増加します。
免疫力が低下するため、肺炎やぼうこう炎、歯周病などの感染症にかかりやすく、かつ重篤化しやすくなります。
そして本命の動脈硬化の合併症の頭文字が、冒頭の「しめじとえのき」です。
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長年の高血糖によって、動脈硬化が進行して「細い」血管が徐々に詰まったり破れたりすると「しめじ」の合併症が現れます。
し=神経症、め=(目の)網膜症、じ=腎症です。
足先などの末梢神経がしびれたり、失明したり、血液透析になったりと日常生活に大きな支障を伴います。
「太い」血管は「えのき」の合併症を起こします。
え=壊疽(えそ)、の=脳梗塞・脳出血、き=狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患です。
中でも下肢壊疽は、糖尿病の合併症が集約されています。
足先の末梢神経障害によって感覚が鈍いため、小さなけがなどに気付きにくく、潰瘍ができます。
また、白癬(はくせん)菌による水虫が悪化しやすく、その皮むけなどから皮膚に細菌が感染して化膿(かのう)します。
さらに動脈硬化によって血流が悪いため栄養や酸素が届かず、傷が治りづらく、ついには下肢を切断しなくてはなりません。
しかし、血流が悪いと手術の傷も治りきらずまた壊疽となり、再び切断ーと、悪循環に陥ります。
しめじやえのきは、おいしく食べるだけにとどめましょう。
(2023年12月19日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)