先日、一人の患者さんが自宅で息を引き取りました。
膵臓がん(膵がん)でした。
最期まで穏やかに家族と共に過ごすことができましたが、膵がんが見つかってから、わずか4カ月弱という急な旅立ちでした。
膵がんは、進行が早いことで知られています。
膵臓を覆う被膜が他の臓器に比べると薄く、がん細胞が膵臓の外に容易に広がってしまうためです。
膵臓の周りには、血管やリンパ管、神経などが集中しており、転移や腹膜播種など広がりやすいため進行がんで見つかることが多いのです。
大きさが1~2㎝を超えると既に転移している可能性があり、早期発見が非常に難しいのも特徴です。
医療の進んだ現代でも、最も手ごわい病気の一つといえます。
著名人が膵がんで亡くなったというニュースが多くなったように、統計的に膵がんの死亡数は、この30年で8倍以上に増加。
肺、大腸、胃がんに続いて4番目に死亡数が多くなっています。
それでは、できるだけ膵がんにならない予防策はないのでしょうか。
膵がん診療ガイドライン2022(日本膵臓学会)には、膵がんになりやすい危険因子が紹介されています。
喫煙は1.7~1.8倍なりやすくなります。
飲酒は1.1~1.2倍とあまり高くなさそうですが、大半は飲酒が原因の慢性膵炎の方は、13.3~16.2倍もなりやすくなります。
肥満も危険因子です(1.3~1.4倍)。
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さらに糖尿病の方は1.7~1.9倍もなりやすいように、生活習慣病によって膵臓に負担がかかることが、危険性を高めていることが分かります。
特に糖尿病と膵がんの関係は「鶏と卵」に例えられ、膵がんの方の26%は糖尿病が持病で、糖尿病が見つかった時や急に悪化した際に膵がんが見つかることがあります。
糖尿病予防は、動脈硬化予防はもちろんですが、がん予防にもなることを覚えておいてください。
(2023年11月28日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)