医良人コラム
23/12/15

第86回 地域に「健康メニュー」を

「1日30食品を目標に」と言う言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。

1985年に厚生労働省の「健康づくりのための食生活指針」で提唱されました。

その後、数にとらわれて神経質になり過ぎる、カロリーオーバーになることなどの問題点が指摘され、2000年には「主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスをよく」と変わりました。

 

ただし、食品数が少ないと栄養素が偏りがちになるため、今でも30食品を目安とするのもよいと思います。

しかし、具だくさんみそ汁など、食品数を増やす工夫をしても、毎日この数を続けることは大変困難です。

 

独り暮らしや経済的な理由で、多くの食材をそろえられない、料理をつくる時間がない、運転免許証を返納して買い物に出かけられない—など、さまざまな要因が健康的な食事への道を阻みます。


診察室で、仕事が忙しい糖尿病のサラリーマンや、伴侶を亡くされて田舎で独り暮らしをしている患者さんの生活の苦労を伺っていると、地域ごとに、薄味でバランスとバラエティーに配慮した「一汁三菜健康定食」のようなメニューを提供してくれるお店があると助かるのにといつも考えます。

 

高齢者向けや疾患別の弁当を宅配してくれる配食サービスの事業者も増えており、試してみるのもよいと思いますが、出かける場所があれば、歩くことで体を動かしますし、顔なじみの人や店員との会話を楽しむなど、栄養面以外にも健康にプラスとなる点が多くあります(本コラム41回参照)。

 

健康メニューだけの専門店でなくても、例えばファミリーレストランや居酒屋で、通常メニューの他に健康メニューが1品でもあると、地域の方々のためになり、新しいお客さんが店に来るきっかけになるかもしれません。

このコラムを読まれた飲食店関係者には、ぜひご一考をお願いします。

 

(2023年5月30日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)

 

👈第85回 「料理すること」で健康に

👉第87回 室温管理で熱中症予防