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今回は前回に引き続きまして、健康七箇条の第一条『しっかり食べる』を解説させていただきます。
前回では、食事、栄養療法の基本は
『食材をなるべく多く、バランスよく食べる』
ことが大切だとお伝えさせていただきました。
人間は単一の要素でできているわけではなくて、さまざまな栄養素の複合的な組み合わせでできているのですから、多くの食材を取り入れるように心がけましょう。
バランスよく食べている食生活ができた上で、気になるところに対して特化したサプリメントを追加するという形で考慮していただくことがよいでしょう、ということを繰り返しお伝えをさせていただきました。
また今回からは、食材と言う言葉と栄養素と言う言葉もきちんと区別しておきましょう。
食材はなるべく多くということはご理解いただけたと思います。
では、次には、そのなかでもどのような栄養素を摂ることが良いのでしょうか?
という疑問が出てきます。
前回のコラムの最後にお伝えをしたのは、
積極的にとるもの
・たんぱく質
・野菜、果物
とりすぎに注意
・塩分
・太めの人の糖質と脂質
・アルコール
でしたね。
栄養の各論に入る前に、みなさんに再度確認をお願いをしておきたいことがございます。
コラムの第5回、第6回で解説をさせていただきました、ご自分の年齢や体質についてと、食事療法を行う目的についても間違わないように、今一度読み直してをして再確認をお願いいたします。
もし、あなたが中年期の少しメタボな、骨太で太りやすい体質の男性Aさんで、持病に高血圧と中性脂肪が高くて内服治療中のため、食事療法の目的が減量であるのか?
それとも、後期高齢者の痩せ型の女性Bさんで骨粗しょう症もあって、体力アップが目的なのか?によって、摂るべき栄養素と、控えるべき栄養素の量が異なってきます。
今一度、第5回と第6回を読んでいただいて、ご自分の体と目的を分析をしてみましょう。
では今回の本題に入ります。
まず積極的に摂るものとして「たんぱく質」と「野菜、果物」をあげさせていただきました。
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たんぱく質
たんぱく質をおすすめする理由は、人間はたんぱく質でできているとっても過言ではないからです。
心臓も、脳も目も髪の毛も、血液も消化酵素や、免疫力にかかわる抗体だってすべてたんぱく質でできています。
人間の体内のたんぱく質は10万種類以上存在するといわれています。
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言い換えると、私たちの体の大部分はたんぱく質でできていて、『たんぱく質は体を構成する重要な物質』といえます。
また、ご存知のようにたんぱく質は筋肉を構成する栄養素です。
第3回でご説明をさせていただきましたが、年齢が上がると病気という問題と同じくらい『体力』と言う問題が、寝たきりや要介護状態の原因として大きく関与するという事実をお伝えさせていただきました。
後期高齢者であるBさんは積極的にたんぱく質をとる必要がありますね。
最近はマスコミなどでも『長寿の方々にはお肉を好んで食べる方が多い。お年よりこそお肉をもっと食べましょう』と宣伝をしてくれています。
Aさんもダイエットをする際に、たんぱく質までも減らしてしまうと筋力が落ちてしまって、基礎代謝が低下して痩せづらくなってしまいます。
ですので、AさんもBさんもたんぱく質は大事な栄養素といえます。
たんぱく質はお肉、お魚、豆類などに多く含まれていることはご存知の方も多いと思います。
では、どのくらい摂ればよいのでしょうか?
厚生省の定める『日本人の食事摂取基準 2015』では、20歳代以上の成人のたんぱく質の推奨摂取量は60g/日となっています。
およそですが、一日で体重1kgあたりたんぱく質1gの摂取が必要と覚える方法もあります。
それを一日三食で分けて摂りますので、一食あたりは20g程度のたんぱく質を摂りましょうということになります。
ここで大事なポイントですが、たんぱく質20g=お肉20gではないということです。
お肉にはたんぱく質の他にも脂質をはじめいろいろな栄養素が組み合わさっていますので、たんぱく質20gを摂るためには、お肉はもっとたくさん食べる必要があるということをご理解していただいておく必要があります。
食事の量と栄養素の量を換算することはとても難しいのですが、せっかくの医良人コラムですので、勉強のためにおおよその目安をお伝えさせていただきます。
たんぱく質を多く含む代表的な食品の食物濃度は、
肉、魚は 100g中20g前後
大豆は 100g中15g前後
牛肉と、お魚の鯛では、当然たんぱく質濃度は異なりますが、食材ひとつずつを覚えられるはずもなく、いちいち蛋白濃度を気にして食材を選ぶはずもありませんので、上記はあくまでも大まかな目安であるとご理解ください。
もっと詳細な情報が知りたい方は
文部科学省の『食品成分データベース』が参考になります。
ですので、極端なたとえですが、たんぱく質を一日で60g分摂取しようと考えたときには、お肉やお魚だけですと300g、大豆だけですと400gになります。
またまた、疑問ですが、一日に大豆を400g以上も食べられないよ~という声が聞こえてきます。
もちろんです。
冒頭にも確認をいたしましたが、食事の基本は『変化のある、なるべく多くの食品を摂ること』です。ひとつの食材ですべての栄養素をとる必要はまったくありません。
私たちの主食のお米は『炭水化物・糖質』のグループに分類をされることが多いのですが、当然たんぱく質も含まれています。
先ほどご紹介をいたしました『食品成分データベース』で確認しますと
私たちの主食であるご飯は100gあたりたんぱく質を2.5g含んでいることが分かります。
ご飯中盛は一杯150g前後ですので、およそ4gのたんぱく質が含まれれている計算になります。
三食一杯ずつでも、一日で12gのたんぱく質をお米から摂っているということになりますね。
トーストも一枚当たり5gのたんぱく質を摂ることができます。
野菜にだって、味噌汁にだって、それぞれたんぱく質は含まれているのです。
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ですので、多くの食材をバランスよく食べることで、自然と一食あたり20gのたんぱく質が摂取できるというわけです。
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ここでお伝えをしたいことは、何度もくりかえして恐縮ですが、食材はなるべく多くバランスよく食べていただくことが前提で、その上で、『たんぱく質が多い食材を知っておいて、少し多くとるように心がけてください』
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と言うことをご理解をいただければ大変うれしく思います。
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その他の代表的なたんぱく源を上げさせていただきます。
牛乳 6g/コップ一杯、ヨーグルト 3.6g/100g、チーズ 20g/100g、卵 6g/個
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動物性のたんぱく質と植物性たんぱく質
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①動物性たんぱく質
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・肉類:のちほど摂るさいの注意点をまとめてご紹介いたします。
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・乳製品:カルシウムも摂れます。脂肪量には注意が必要です。
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②植物性たんぱく質
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・その他
実は現代の日本人の食生活では、動物性のたんぱく質は足りていると言われています。
ですので、私たち日本人は植物性たんぱく質の方を積極的に摂りたいのですが、豆類以外の植物性たんぱく質にはこれというものが他にありません。しかし、それぞれ個々の野菜だけではそんなに多くは含まれていなくても、種類や量を多く摂っていただくことで、自然と植物性たんぱく質の総量が増えますね。
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以上、たんぱく質の分類をまとめてみました。
他にも健康について覚えていただきたいことはたくさんありますので、ここではこれだけ覚えておいていただければ十分です。
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さて、たんぱく質の摂取量に話を戻します。
次には、そんなに大切なたんぱく質は、一食当たり20g以上、もっともっと一度に大量に摂るとよいのではないか?という考え方も出てきますね。
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そのとおりです。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書『高齢者』の項目には、
「高齢者のたんぱく質摂取量は一食あたり25~30g程度摂取しなければ骨格筋で有効なたんぱく合成が 1 日を通して維持できないない可能性がある 」と記載されています。
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一方、一度に20g以上のたんぱく質をとっても吸収や合成で効率が悪くなるともいう考え方もあります。
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筋肉を例にしますと、一度に多くのたんぱく質を摂るよりも、間食やおやつ、運動後、睡眠前の捕食として小分けに摂る方が、筋肉内のたんぱく質の分解を防いで筋肉の衰えを防止することができることが分かっています。
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逆に20gより極端に少なかったり、朝食を抜いたりすると、エネルギー不足のため、せっかく体に利用されているたんぱく質が分解されてエネルギーに回されて消費されてしまいます。
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減量が必要なAさんも、糖質制限を徹底しすぎてしまうと、全体の摂取エネルギー量が不足してしまい、頑張って摂取したたんぱく質も、体に貯蓄しているたんぱく質もエネルギー減として消費されてしまいます。
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極端はよろしくないということです。
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朝ご飯を食べないとじょじょに筋力が衰えてしまっているということにお気づきいただけると思います。三食をきちんと、バランスよく食べるという基本的な食事が大切だといえますね。
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じゃあたんぱく質はどのくらいまで摂っても大丈夫なのかという点につきましては、健康な方では体重あたり1.2g~2g/日程度までのたんぱく質を摂取をしても体に害はでないといわれています。
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Bさんは、やせ型ですので、もともと体質的に栄養の吸収や合成力が低めである可能性があります。
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お年が上がることによって、だんだんと腸からの栄養の吸収力や肝臓でのたんぱく質の合成力が衰えてきますので、たんぱく質1日1gの標準量では、じょじょにたんぱく質量が不足して、筋力や体力が低下してくることが分かってきています。
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ご年配の方は、腎臓の働きに問題がなければ、体重あたり1.2g~1.5g/日程度を目標にたんぱく質を摂るように心がけた方がよいでしょう。
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今までよりも、たんぱく質を2~5割増しの食事を心がけるということですね。
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しかし、なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとしで、たんぱく質を摂るさいにも注意する点がいくつかあります。
たんぱく質を摂取するさいの注意点
・たんぱく質を摂るときには、運動もして筋力体力をつけましょう。
たんぱく質を摂っているだけではけっして体力はつきません。運動をして始めて筋力体力がつくのです。
また、筋力維持のために利用されないたんぱく質は、結局は分解をされて『脂質』に作り変えられてしまうのです。
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筋力をつけようと思って、脂肪をつけてしまうことがないように気をつけてください。
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適切な運動につきましては、後日第二条『楽しく運動を継続する』で詳しく解説をさせていただきます。
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・お肉類の取り方には注意が必要
動物性のたんぱく質を摂るさいには、含まれる脂質の量に注意が必要です。
とくに減量を心がけたいAさんは、脂身の部分が少ない部分を選んだり、ゆでこぼしや、取り除いたりする必要があります。
最近は鶏肉の胸肉が脂肪分が少なく高たんぱく質で人気のようですね。
Bさんは気にせずにたくさん食べても大丈夫です。
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また、動物性のたんぱく質を摂りすぎるとコレステロールや尿酸値が上昇する人もいますので注意が必要です。
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最後ですが、動物性のたんぱく質、とくに加工肉や貯蔵肉を摂りすぎると、発がんのリスクが高まる可能性が指摘されています。
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・腎臓が悪い人は注意が必要
健康診断や、かかりつけの先生に慢性腎臓病を指摘されたことがある方は、たんぱく質の過剰摂取が腎臓に負担をかけてしまうことが知られていますので、ご注意ください。
腎臓病の進行度によって、たんぱく質制限が必要な方と必要でない方がいらっしゃいますので、かかりつけの先生にご相談をしてください。
・一日のたんぱく量は体重1kgあたり2g程度までにしましょう
健康な方でもたんぱく質を1kgあたり2g以上摂取すると、さすがに腎臓や肝臓に負担がかかる可能性が指摘されています。
また、ふつうの活動量の方ではそれ以上のたんぱく質は体が有効利用できないとも考えられます。
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以上今回は体を構成する重要な『たんぱく質』について解説をいたしました。
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最後になりますが、『私はそんなにお肉をたくさん食べられないよ』と言う方はプロテイン製品を利用してみるのはいかがでしょう?
プロテインはスポーツ選手が飲んでいる印象が強いですが、なにもスポーツ選手だけのものではありません。
精製をされていますので、効率よくたんぱく質をとることができます。
最近は研究も進み、食品会社さんなどから味のよい飲みやすい製品が多く出ていますのでいちど検討をしてみてください。
飲みにくいイメージの粉末製品ばかりではなくて、ゼリーやスティックタイプのものもあります。
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粉末製品も溶かして飲むだけではなくて、そのままお料理に使用してみてもよいでしょう。味に影響のない程度で少しずつ追加して使用するのはいかがでしょうか?
ただし、摂り過ぎにならないようにご自分の使用するプロテインに含まれるたんぱく質の割合はしっかりと確認しておきましょう。
プロテインの種類は動物性か植物性かによってすこし特性が異なりますが、トレーニングのプロになるわけではないのでこだわらずに飲みやすいお好みのものでよいでしょう。
今までサプリメントは積極的に勧めてこなかったのに矛盾をしているのではないか?というご意見があるかもしれませんが、ここでのプロテインはサプリメントや健康食品としてではなく、あくまで栄養補助のための食品であるとの考えに立ってお勧めしています。
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まとめ
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・人間を構成するたんぱく質は10万種類以上
・たんぱく質は筋肉の元であり、とくに高齢者では体力維持、アップのためにも大切
・たんぱく質は少なくとも一日60g、一食20gを目安に摂りましょう
・食材に含まれるたんぱく質のおよその量を知っておくと便利です
・魚介類、乳製品、植物性たんぱく質を多く摂れるとなおよいです
・食事の他に、運動をした後やおやつなどで捕食をしてもよいでしょう
・上手にプロテイン製品をとり入れてみましょう
・たんぱく質の摂りすぎの注意点も確認をしておいてください
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信 州 メ デ ィ ビ ト ネ ッ ト 健 康 七 箇 条
一 . し っ か り 食 べ る
二 . 楽 し く 運動 を 継 続 す る
三 . 自 分 の 体 を 大 切 に す る
四 . 予 防 で き る も の は 予 防 す る
五 . 医 療 関 係 者 の 相 談 相 手 を 持 つ
六 . 明 る く 楽 し く 暮 ら す
七 . 正 し い 知 識 を 持 っ て 、 実 践 、 継 続 す る
『食品成分データベース』文部科学省
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条①
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条② (今回)
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条③
健康ってなんだろう? 信州メディビトネット健康七箇条 第一条④