医良人コラム
18/9/26

第2回「健康の見つけ方」〜医療者の役割考えて活動〜

(信濃毎日新聞中信版MGプレスに掲載した記事を再掲載しています。)

健康の話に入る前に、医療者の団体「信州メディビトネット」を立ち上げた経緯をお話しします。

私は信州大学を卒業後、地域医療に携わりたいと北海道に渡りました。北海道大学附属病院や、オホーツク海沿岸の週に1日、午前中だけ開かれる診療所など大小さまざまな医療機関に勤務し、おのずと内科だけにとどまらない総合診療的な視点が養われました。

北海道は慢性的な医師不足で、しばしば応援診療に呼ばれます。廃坑になって高齢者ばかりが残る町、過疎化が進んで診療所が閉じられた村などを回り、地域社会を支える医療の果たす役割と、住民と医療機関の双方が存続するための仕組みづくりの必要性を考えさせられました。

5年働いた後、信州に戻り、「がんばらない」の鎌田實先生で知られる諏訪中央病院に勤務しました。地域教育や住民支援に力を入れる、予防や健康増進活動に熱心な病院です。

ここでも地域医療や在宅診療に関わり、医療者が地域に情報を発信し、地域全体の健康度を向上させる取り組みを体感しました。

5年後、子育てに良い環境を求めて松本へ戻って来ました。そして間もなく東日本大震災が発生。私は94歳のおばあちゃんの家を訪問診療中でした。

すぐに岩手県に連絡し、津波で壊滅的な被害を受けた県立高田病院(陸前高田市)で2カ月間手伝わせていただきました。自宅を失った職員、家族を亡くされた方たちとの共同生活は、人の命や医療者の役割、医師になった原点を改めて考え直す日々でした。

この体験を通して「後悔のないように自分が大切だと思う行動をしよう」「診察室で待っているだけでは出会える人の数はごくわずか。少しでも多くの人たちに情報を届けて、将来健康に悩む人を未然に防ぎたい」という思いが起こり、信州メディビトネットの活動を始めることにしたのです。

 

(2018年5月29日付MGプレスから)

 



👈 第1回「健康の見つけ方〜健康とは何か整理しよう〜」

👉 第3回「健康の見つけ方〜健康を意識する火曜日に〜」