医良人コラム
18/3/17

第15回 松本ヘルスラボ 健康講座まとめ 2月24日 

 

2月24日(土)松本市の浅間温泉文化センターで、松本ヘルスラボの会員様向けに、私たち信州メディビトネットが担当する本年度4回目の健康講座を開催させていただきました。

今回のテーマは 『信州ACEプロジェクト』 です。

みなさん この言葉をご存知でしょうか?

長野県が平成26年から推進する新しい健康普及活動の名称です。

AAct 運動です。
CCheck 健康診断やがん検診を受けましょう。
EEat 食事や食べることを大切にしましょう。

以上の三つのキーワードの頭文字から出来た言葉です。

そして長野県が世界で一番の健康県を目指そうという意味がこめられています。
(トランプの『』をエースとよびますね)

もっと詳しくお知りになりたい方は信州ACEプロジェクトホームページ をご覧ください。

私たち信州メディビトネットは長野県から支援をいただいて、ACEプロジェクトの普及活動を進めています。

 


今回の一人目の講師は信州大学歯科口腔外科教室 歯科衛生士の宮崎詠里先生でした。

講演タイトルは『お口とからだの関係』です。

CheckやEatに当たりますね。

 

みなさんも8020運動という80歳で20本の歯が残るように歯を大切にしましょうという言葉を聞いたことがあると思います。

ではどうしてそれほど歯が大切なのでしょうか?

① オーラルフレイル(口の虚弱)という新しいキーワードをご紹介いただきました。

歯周病虫歯によって歯が抜ける ⇒ かむ力が衰える ⇒ 食べられないものが出てくる ⇒ 栄養が低下する ⇒ 体力が衰える ⇒ 要介護になりやすい、認知症にもなりやすい

② お口の中が清潔でないと雑菌が増えます。①の体力低下に伴って、飲み込む力も弱くなると誤嚥性肺炎を起こす危険性が高まります。

③ また、口腔内の細菌に関して最近新しいことが分かってきました。
なんと、大動脈の手術などを受けたかたの血管を詳しく調べると、動脈硬化を起こしている部分から、口腔内の細菌が見つかったのです。

歯周病は歯ぐきの炎症 =『きず』ですので、そこから体の中に細菌が入ってしまうのです。

その結果歯周病のある方は、動脈硬化などの全身病に影響が大きいことが分かってきました。

狭心症、心筋梗塞糖尿病認知症、肥満、骨粗しょう症がん などが、歯周病のある方はよりなりやすく、より悪化しやすいことが分かりました。

実際に歯がより多く残っている人ほど、医療費が少ないという統計データも示していただきました。


以上のように大切な歯を守るための正しい歯磨きの方法と、唾液の分泌や口の周りの筋肉の体操として健口体操を教えていただきました。
ご興味のある方は、ぜひ検索をしていただいて実践をしてしみてください。


信州メディビトネットのホームページ『信州健康まんまる◎広場』内のみんなの健康百科『歯周病』のページもご覧ください

第二部は松本医療センターまつもと病院糖尿病内科の青木雄次先生からお話をいただきました。

講演テーマは『肥満と糖尿病 人はなぜそんなに食べるのか?』『肥満と糖尿病 人はなぜそんなに食べるのか?』

糖尿病はAct、Check、Eatすべてに関係しますね。

まずキーワードは正しい知識を持つことが大切だとおっしゃっておられました。

人類の発達の過程と細胞のミトコンドリアのお話から始まりました。
300万年以上の歴史の中で、食事を満たされたのはここ50年ほどのこと。
脂肪の蓄積に人類の体が慣れていないために、体にもろもろの弊害を引き起こしてしまう。
満腹感という報酬は体にしっぺ返しが来るので、適切に抑制できるようにしましょう。

その他にも研究中のアンチエイジングのお話にも触れられました。

食品中のベータカロチンは抗酸化効果や発がんの抑制効果があることが知られていますが、それをサプリメントにして高濃度にして摂りすぎると逆に発がん率が上がってしまうことが分かりました。

ということは、
『過度に摂りすぎずに適切量を摂る、バランスよく摂る、食品から摂る、ということが基本的に大切になる』
とお話をされていました。


会場のみなさまから、印象に残るご質問もたくさんいただきました。

宮崎先生への質問

Q:テレビで朝の起床時が口腔内の細菌が一番多くなるため、朝起きたらすぐ歯を磨く方がよいといっていた。また、食事の直後は唾液がせっかく出ているので、すぐには歯を磨かない方がよいといっていたが、どのくらいの時間を空けて磨くのが適切なのか?

面白い率直なご質問ですね。

宮崎先生は、はっきりした正解はないので、少なくとも食後三回はしっかりと歯を磨きましょう

とお答えされました。


私もそう思います。
以下は私の個人的な解釈と意見ですが、

朝起きた直後が細菌の数が多いのは事実ですが、気になればもちろんそこで一回歯を磨いていただいてもよいでしょう。

しかし、その後ふつうは1時間ほどしたら朝ご飯を食べますので、その後にまとめて磨いてもそれほど大きな差はないものと思われます。

食後の歯を磨くタイミングに関してですが、食事をして出てきた唾液を大切にするのか、食後歯磨きまでの時間を気にして過ごさなくてはなりませんし、歯を磨き忘れてしまうというリスクも生じてしまいます。

忘れずに食後すぐに歯を磨くことと、どちらがより大切でしょうか?

歯磨きをした後にも唾液は出るでしょうし、後でお示しをします健口体操で唾液腺を刺激してもよいでしょう。

ちょうど講演会の前日に私は松本市歯科医師会の「摂食嚥下を考える会」の講演会に参加をしていました。

講師は大学で専門的に研究をされていらっしゃった方で、松本地域を中心に『口腔ケア』を熱心に広められておられる歯科の先生でした。

その先生が大学で研究をしたところ、一日の口の中で最も細菌数が多いのは、朝起きたてよりも、食後すぐよりも、『歯磨きをしてうがいをするまでの間』だったという結果だったそうです。

ですので、歯磨きをするタイミングや回数などの細かいことをいろいろと考えてもよいのですが、『歯磨きの後はしっかりとうがいをしてゆすぐ』ことが大切だということがお分かりいただけますね。

よく考えますと、すすぎが大切だということは、洗濯でも、シャンプーのさいにもよく聞くことですね。

医療者としての私の意見を申し上げますと、テレビなどのマスコミは、新しいこと、聞きなれないこと、少しショッキングなことをお伝えしないと、視聴者に振り向いてもらえないためでしょうが、いろいろな諸説、新説を取り上げます。

たとえば、私自身は別のマスコミで、「歯垢は24時間経過するころから悪影響を及ぼしだすので、一日一回の歯磨きでもよい」という意見を聞いたことがあります。

最初のご質問の一日4回派と1回派とどちらが正しいのでしょうか?
これらは、その時々のコメンテーターの個人的な経験によるご意見の相違だといえると思います。

さまざまな研究をしている方がいますし、同じような研究をしてもまったく逆の結果が出ることも医学の世界ではよくあります。

それらの、多くの研究者が研究を重ねた結果を比較検討して、より信頼性が高い結果を集めて『標準治療』『ガイドライン(治療指針)』ができるのです。

それを私たち医療者が参考にして、みなさまに還元をさせていただいています。

先端的な新しいことは目をひかれますが、まだ定説にはなっていないうちには飛びつかないほうがよいことはしばしばあります。

また、それがどれほど大きな意味を持つかも考える必要があります。

一日3回と4回の歯磨きでそれほど大きな差が出るのでしょうか?
もちろん、歯は大切なので、心配な方は4回やってもよいと思います。
手術前後に、誤嚥性肺炎予防のために一日4回の歯磨きを指導する病院もあります。

しかし、医良人コラム『健康ってなんだろう 信州メディビトネット健康七箇条』をお読みになっていらっしゃる方はお気づきになられた方も多いと思いますが、健康づくりは、『歯みがき』だけではありません。

他にも健康づくりのためにはやらなくてはいけないことがたくさんあります。

50点しかできていない歯磨きを、70点にしていただきたいというのが私たちの願いです。

しかし、すでに80点程度出来ていることを90点にするためのさまざまな工夫で、枝葉末節、新説を気にしすぎていては、とても時間が足りませんし、よい健康づくりとは言えません。

健康七箇条で繰り返させていただいていますが、ひとつだけで万能な健康法や健康食品はございません。

こまかなことにこだわるよりも、健康に大きな影響を及ぼす、食事方法や体力づくりの基本を学んで、実践、継続につなげていただくバランス型の健康づくりをしていただくことがもっとも大切なのです。

ということで、このご質問のお答えは、宮崎先生のお答えと同じく

A:テレビやマスコミ情報はそういう意見もあるのね~と言う程度できいておいて、
標準的な『歯磨きは標準的に食後に三回しっかり磨く』
ということでよろしいのではないでしょうか?

青木先生へのご質問

Q:『最近テレビでカロリーを3割カットする画期的な炊飯器が出たがどうなのか?』

青木先生はその製品をご存じないのでコメントが難しいとおっしゃっておられました。

わたくしも知りませんでしたが、後ほど調べてみますと、結局は『最初のゆで汁を一度捨ててしまう』という仕組みのようです。

ゆで汁に溶けているカロリー成分が流れ出してしまうので、3割分カロリーを減らすことができるということです。

すごい発明ですね。

メリットは「同じ量を食べてもカロリーが減る」ということなのでしょうが、しかし、デメリットは「その分他の栄養分も流れ出てしまう」といえます。

考えてみますと流れ出た栄養素分を他の食材で補わなくてはなりませんし、そちら分の食費やカロリー増も見過ごせません。
栄養的にも費用的にももったいないですね。

すべてが、うまい話はそんなにはありませんね。

A:そこまでしても、白いご飯をしっかり『量』を食べたい、食べる『量』をどうしても減らすことができない方には一つの方法になるかもしれません。


ご質問をいただきましたお二方ともテレビの情報でした。
テレビやマスコミは健康情報を発信をしてもらえて、啓発をしてくれる点ではとてもありがたい存在です。一方テレビは目新しいことを伝え続けないと視聴者にインパクトを与えられないため、よく考えてみると現実の世界では大同小異だったり、実際的ではないことも多々あるというよい例でしたね。


本日のまとめ
物事には重要度というものがあります。
健康に大切なことをを医良人コラムで学んでいただき、基本的な正しい知識を持って、枝葉末節や新しいことに振り回されないようにしましょう。

 

信州ACEプロジェクト
健康づくりの基本となる

AはAct 運動
CはCheck 健康診断、がん検診を受ける
EはEat 食事

の大切さをシンプルに表していますね。

私たち信州メディビトネットは医療者の団体として、集まった医療情報をわかりやすい信頼できる健康情報としてみなさまにお届けしています。

正しい基礎知識がないと、間違った健康法を行ってしまう危険性もあります。
来年度も私たちの健康講座へぜひご参加ください。

※ この講演会は松本市が運営する『松本ヘルス・ラボ』の会員様向け健康講座でした。

聴講には、松本ヘルス・ラボへのご加入が必要になります。
詳しくは松本ヘルス・ラボ ホームページをご覧ください。

 

各疾患の詳しい情報は、当ホームページ『信州健康まんまる◎広場』の『病気の基礎知識』の各ページをご参照ください。

参考ページ:歯周病肺炎糖尿病認知症

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