医良人コラム
25/7/20

第124回 誤嚥に注意 食事も体力勝負

「ご縁」は増やしたいけれど「誤嚥」は避けたい」ーと、願う人は多いと思います。

在宅診療をしていると、しばしば誤嚥性肺炎に出遭います。

痛切に感じることは「食事も体力勝負」だという事実です。

若いうちは何げなく食事を楽しんでいますが、食べるという動作を一つずつ分析すると、かみ砕く、舌で送り込む、飲み込むーの全てで筋力を使っていることに気付きます。

高齢になり全身の筋力が低下する

→かむ力や喉の筋力も衰え

→かみにくく、飲み込みづらくなる

→食事の量が減り、軟らかい物ばかりになる

→栄養が不足し、筋力や歯、顎の骨が弱る

→食事に時間がかかり疲労する

→食事が楽しくなくなる

→さらに食事の量が減る

→さらに体力、筋力が低下する

→さらにかんだり、飲み込んだりが困難になる

→さらに栄養が不足する

→体力低下が加速する。

この悪循環が「オーラル(口腔)フレイル」の構造です。

この悪循環が進むと、誤嚥性肺炎や窒息の危機が迫ってきます。

恐ろしいのは、一度誤嚥性肺炎を発症して入院すると、退院できても体力が一段階低下する方が多く、誤嚥性肺炎を繰り返すようになります。

東京大学による65歳以上を対象にした研究では、歯が20本未満、かむ力が弱い、舌の力が弱い、舌の動きが悪い、硬い食品が食べづらい、むせやすいーの6項目のうち3項目以上に該当するグループは、該当ゼロのグループに比べて、死亡率が2.09倍、介護が必要になった割合は2.35倍にも上昇しました。

わずか4年間の追跡結果ですから、長期間になるとますます大きな差が開くことが予想できます。

進行してから嚥下リハビリに励むよりも、早期から予防したいものです。

具体的な対策は?

かむのも、飲み込むのも筋力が必要です。

よって今回も「鍛える」ことが大切になります。

次回、そのための「健口体操」を紹介します。

(2025年4月29日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)