昔、アメリカのハンバーガー店の経営者に「なぜ味を濃くするの?」と尋ねたところ、「清涼飲料水が売れるようになるから」と答えたそうです。
資本主義経済の競争の中では、顧客の健康よりも経営が優先されることはしばしばあります。
日本でも、外食店や弁当、加工食品など、味が濃い商品が多いのが現状です。
「濃い味対策」に取り組んでいる先進的な事業者も増えていますが、売り上げへの影響を心配して、踏み出せない事業者も多いと思われます。
イギリスの場合です。
主食のパン生地には塩が練り込まれます。
調査の結果、イギリス人はパンからの塩分摂取量が最も多いことが判明。
行政は、国中のパンの関連団体や企業に提案しました。
「パンの塩分を減らそう」。
急に減らすと薄味を受け入れらない人も出てきます。
そこで10年もかけてゆっくりゆっくりと国中のパンの塩分濃度を20%下げました。
その結果8年目には、心筋梗塞と脳卒中の死亡率はそれぞれ約40%も低下し、医療費は年間約2300億円削減できました。
前回紹介しましたポピュレーションアプローチによって、図のように「血圧分布」の集団の山を左に動かすことが、病気の総数を減らすことにつながります。
日本人の上の血圧が平均4㎜Hg下がると、1年間で死因2位の心臓疾患を5千人、4位の脳卒中を1万人も減らすことができると推計されています。
日本でも行政が主導して、関係する団体を巻き込んで国民の健康づくりに取り組んでほしいと願っています。
統一地方選が終了しました。
ポピュレーションアプローチの山を大きく左へ動かしてくれるような政治が行われることを期待します。
(2023年4月25日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)