「ハイリスクアプローチ」と「ポピュレーションアプローチ」という言葉をご存じですか?
血圧と脳卒中の関係を例に解説します。
ハイリスクアプローチは、高血圧で脳卒中を起こす危険度が高い(ハイリスク)人に、個別に指導や投薬をして予防する対策。
一方、ポピュレーションアプローチは「住民・人口」を意味するポピュレーションという単語が使われている通り、住民全体への集団対策になります。
私が患者さんと1対1で高血圧診療を行うのがハイリスクアプローチ。
本コラムを書いたり、「信州健康かるた大会」を開催したりするのがポピュレーションアプローチにあたります。
意外かもしれませんが、ハイリスクアプローチだけでは、社会全体の脳卒中の予防効果はそれほど大きくはありません。
図を見てください。
血圧が高い人ほど脳卒中を発症する「確率」は高くなりますが、母数が少ないため「発症数」は多くありません。
それに対し、血圧がやや高めの境界域の人は、脳卒中の発症率もある程度高いうえ、母数が多いため「発症数」は一番多くなります。
佐久総合病院を育て、農村医療を確立した、故若月俊一先生のように、出張演劇で病気の啓蒙や、健診事業を始めるなど、全住民の病気予防のためのポピュレーションアプローチに取り組んだ偉大な先人もいますが、医療者だけでは不十分です。
マスコミと協力したり、企業に呼びかけ「減塩商品」に取り組んでもらったりすることも効果的です。
先導する行政の役割も重要です。
今月、統一地方選挙があります。
「病気で悩む人を減らそう!医療費や介護負担を減らそう!」と訴えて、実際に行動してくれる政治家が現れることを期待します。
(2023年4月4日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)