医良人コラム
20/10/14

第32回 「膵臓不全」防ぐために

「膵臓(すいぞう)不全」という言葉はあまり聞きませんね。
正しい医学用語ではありません。

しかし、膵臓不全という言葉は「糖尿病」が起こる様子を的確に表している言葉だと思います。

糖尿病は高い血糖値が続いて動脈硬化が進行し、やがて心筋梗塞や慢性腎臓病による透析などを引き起こす生活習慣病の代表です。
高血糖は体や血管に良くありません。
しかし、血糖値を下げてくれるホルモンは、膵臓でつくられる「インスリン」だけしかないのです。

猿人から人類へ進化する数百万年の歴史の中では、食物不足による飢餓に直面することばかりだったため、体は血糖値を上げる仕組みは複数獲得できました。
一方、下げる仕組みは、必要な状況が少なかったため、インスリンだけで、膵臓の働きもそれほど強くなくてもよかったのです。

しかし、急速に飽食が進んだ現代では、食べ過ぎが多くなり、その都度、膵臓はインスリンを絞り出さなくてはなりません。
日々、膵臓を酷使し続けると、インスリンをつくる細胞が傷つき、徐々に減り、やがて回復ができなくなります。

糖尿病と診断されたときには、膵臓の働きは既に半分程度まで低下しています。
インスリンの分泌量が減ると、以前と同じ食事量でも血糖値がより上がりやすくなるため、膵臓はさらに頑張ってインスリンを絞り出そうとして負担が増えます。

するとさらに膵臓は疲弊して―と、悪循環が加速して「膵臓不全」が進行するのです。

この理屈を知っておくと、若い年代からの食べ過ぎによる日々の膵臓への負担の積み重ねが、後年の糖尿病へとつながる流れをよく理解できると思います。

人生100年時代、大切な膵臓を一生持たせなくてはなりません。
どの年代からでも遅くはありません。食べ過ぎに注意をして、腹7~8分程度を心掛けましょう。
(2020年1月21日(火)付MGプレス「健康の見つけ方」から)

 

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