腰痛症

介護が必要となった原因疾患 第5位(関節疾患)

 

信州大学医学部 整形外科(運動機能学教室) 監修

どんな病気

腰痛症は日本人の訴える症状の中で、男性・女性は共に1番に訴える人が多い(令和4年国民生活基礎調査)疾患です。

発症から1カ月までを急性腰痛症、3カ月を超えると慢性腰痛症といわれます。

急性腰痛症

一般的に、「ぎっくり腰」とも呼ばれます。

物を持ち上げた、あるいは、姿勢を変えた等のちょっとした動作がきっかけで、突然腰痛が起こり、動けなくなります。

1~2週間程度でおさまることも多いのですが、4週間以上痛みが続く場合には、別の疾患が隠れている可能性がありますので医療機関を受診しましょう。

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痛みの程度には差がありますが、人によっては動けなくなるほどの痛みとなることもあります。

ドイツ語で、「魔女の一撃(ヘクセンシュウス)」と呼ばれます。

慢性腰痛症

腰痛症が、3か月以上持続すると慢性腰痛症と呼ばれます。

慢性腰痛症は、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの原因が見つかる場合もあります。

日常生活による様々な負荷が複雑に絡まって慢性化している場合には、原因を特定することは困難となります。

原因

急性腰痛症

• 重い物を持ち上げた

• 急に椅子から立ち上がった

• 前かがみになった

• くしゃみをした

などの急な動作や無理な姿勢によって、腰部の筋肉、筋膜、靭帯、椎間板、椎間関節などが
損傷して起きると考えられています。

しかし、画像などの検査では、はっきりした原因がわからないこともしばしばあります。

痛みが長期間にわたって、慢性腰痛症に移行することもあります。

慢性腰痛症

原因はさまざまですが、急性腰痛症と同様に、原因がはっきりとわからないものも多くあります。

• 長時間同じ姿勢でいる、運動不足、肥満、冷え症などの身体的要因

• ストレスの多い環境、不安、不眠や、腰痛が長期にわたることによるストレスなどの精神的要因

などの複数の原因が絡み合うことで、慢性化するとも言われています。

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運動機能の低下によって筋力がおちると、脊椎の安定性がなくなるために痛みが引き起こされます。

とくに、中高年になると、加齢によって、腰や背中の筋肉が弱くなっていますので気をつけてください。

代表的な病気

腰椎椎間板ヘルニア

背骨のクッションである椎間板が、脊椎の髄核から飛び出すことを椎間板ヘルニアといいます。

ヘルニアが神経を圧迫することで痛みやしびれをおこします。

比較的若い人に多くみられる病気です。

日本整形外科学会ホームページより引用

脊柱管狭窄症

加齢によって、脊髄の通り道である「脊柱管」が狭くなってしまい、脊髄が圧迫されるために腰痛や下肢の痺れを起こします。

安静にしている場合には、ほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立って歩いたりする際に、足にしびれや痛みがでて歩きにくくなります。

難病情報センターホームページ(平成29年8月現在)から引用

腰椎分離症腰椎すべり症

腰を後ろにそらせたときに、痛みが強くなるのが特徴です。

多くは体の柔らかい10代の頃、スポーツなどで腰椎に負担をかける動きを繰り返すことで起こります。

一般の人で5%程度、スポーツをする人で30~40%の人が分離症となるといわれています。

分離症は10代で起こり、徐々にすべり症に進行していく場合があります。

 

変形性脊椎症

骨粗鬆症による圧迫骨折

坐骨神経痛

坐骨神経痛は病名ではありません。

腰から足にかけて伸びている坐骨神経が、上記のようなさまざまな病気によって圧迫されるために神経症状が出た状態を表します。

歩いたり、腰をそらす姿勢などで、おしりや脚に痛みやしびれが起きます。

日本整形外科学会ホームページより引用

症状

急性腰痛症

• 腰部の強い痛み

強い痛みのために動けなくなることもある

慢性腰痛症

• 腰全体の重だるい感じ

• おしりや脚にかけて痛みやしびれを伴うこともある

• 長時間、同じ姿勢をとると痛みが増す

• 雨の日や寒い日など天候不良により痛みが増す

検査

必要に応じ、レントゲン検査や、MRI検査、超音波検査などで腰椎や脊髄神経、椎間板などに異常がないかを検査します。

治療

安静にする

急性腰痛症では、強い痛みが軽減されるまでは、無理をせずに安静にします

ただし、最近は安静を保ちすぎると、かえってその後の経過がよくないことも指摘されています。

「腰に負担をかけてはいけない」と思うことがストレスにつながったり、腰を動かすことを避けることで腰の筋肉が固くなり、再発や慢性化につながってしまいます。

強い痛みが落ち着いた後は、安静にし過ぎないで、姿勢に気をつけながら、ふだんの仕事や活動の中で回復を待ちましょう

運動をする

運動は、慢性腰痛の改善と腰痛の再発予防にとても有効であることが分かっています。

筋肉が弱ると腰椎が不安定になってしまって、より腰痛が慢性化しやすいためです。

こわばった筋肉をほぐしたり、柔軟性を高めるためのストレッチや、腹筋や背筋、腰回りの筋肉を強化するための筋力トレーニングが効果的です。

運動や体操は、正しい姿勢で、反動を使わずに行うことが大事です。

痛みがある際や、つらいと思ったら無理をしないことも大切です。

 

薬物療法

炎症や痛みを抑える内服薬や座薬、貼付剤を使用します。

筋弛緩薬や抗不安薬、抗うつ薬などが併用されることもあります。

慢性腰痛症で、長期に鎮痛剤を使用する際には、胃潰瘍や腎機能障害に注意が必要です。

トリガーポイント注射、ブロック注射

痛みが強い場合に行います。

コルセット(装具)

腰のまわりの筋肉を補助し、腹圧を高めて腰への負担を軽減させます。

腰に負担のかかる動作の補助や、痛みの強いときには有用です。

常時使用すると自分自身の筋肉を使わないために、衰えてしまって、より腰痛が慢性化する危険性があります。

温熱療法

冷えると痛みが出たり、血流を改善するため、入浴やホットパック(カイロ、温感湿布なども)で温めます。

手術療法

椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症で、強い痛みが続く場合や、運動麻痺、排尿障害が認められる場合にはすみやかに手術を考えます。

ホームドクターからのアドバイス

腰痛の予防

• 姿勢が悪いと腰へ負担がかかります。姿勢を工夫しましょう。

• 重いものを持ち上げるときには気を付けましょう。

• 中腰の姿勢は腰に負担が大きいので控えて、
かがむときには膝をしっかりと曲げましょう。

• 筋肉の緊張を防ぎ血流をよくするため、下着を1枚多く着たり、
入浴などで冷やさないような対策もよいでしょう。


日本臨床内科医会ホームページ より 引用

レッドフラッグ

危険を知らせる赤い旗という意味です。

腫瘍や感染などによる危険な腰痛の兆候を示すサインといわれていて注意が必要です。

• 安静にしていても痛い

• 痛みが徐々に強くなる

• 発熱をともなう

• 体重が減ってきた

• 足のまひがある、尿や便の失禁をともなう

 

もっと調べる

参考リンク

日本整形外科学会 病気・症状をしらべる 腰椎の症状 腰痛
日本臨床内科医会 腰痛
日本医師会 健康の森 病気をチェック! 腰痛
労働者健康安全機構 労災疾病等医学研究普及サイト 筋・骨格系疾患

初診に適した科

整形外科

頼りになる病院

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長野市 篠ノ井総合病院

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