信州大学医学部 歯科口腔外科学教室 監修
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どんな病気
歯周病とは、歯周炎、歯肉炎などの総称です。
いずれも、細菌の感染によって歯のまわりにある歯周組織が炎症を起こしている状態です。
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成人の歯を失う一番の原因は、「歯周病」です。
歯肉炎:歯肉が赤く腫れます。炎症は歯肉にとどまった状態。
歯周炎:炎症が歯を支える歯槽骨(しそうこつ)まで及んで、歯槽骨がとけている状態。
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自覚症状がはっきりしないため、あきらかな歯のゆれを自覚したときには、病状がかなり進行している場合がほとんどです。
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定期的な歯科検診と予防治療が大切です。
厚生労働省の2017年度調査によると、「歯肉炎及び歯周疾患」で通院治療中の方はおよそ398万3千人です。
50歳以上の50%以上に歯周病の兆候が見られたと報告されているため、未治療の方がとても多いと推定されています。
また、歯周病は糖尿病、心臓や脳血管の疾患にも深く関わっています。
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原因
食事をしたあと、口の中に残った食べかすが時間をかけて細菌の塊に変わります。
これをプラーク(歯垢)と言い、歯周病の主な原因となります。
プラーク1mg中にはおよそ1億匹の細菌がいると言われています。
これは便と同じ程度の細菌数です。
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プラークが形成されやすい要因
• 歯磨きが不十分
• 歯並びの不整
• 口呼吸
そのほか、年齢、栄養状態、糖尿病、喫煙などの生活習慣病、薬剤などの要因もあります。
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症状
画像提供:信州大学医学部 歯科口腔外科学教室
• 歯ぐきが赤くはれる
• 出血する
• 歯肉が下がり、歯の根が見えて、歯が長く見えるようになる
• 膿が出る
• 口臭がある
• 歯がグラグラする
• 歯が抜けてしまう
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検査
歯周ポケット検査
『プローブ』とよばれる歯科用ものさしで歯周ポケットの深さを調べます。
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歯の動揺度検査
歯のぐらつきを1本1本調べていきます。
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レントゲン検査
レントゲンで骨がどのくらい溶けているかを調べます。
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治療
歯科での治療
• 原因となるプラーク(歯垢)をしっかり取り除くために、正しい歯磨きの仕方を指導します。
• 歯磨きでは取ることのできない歯石を除去します。
• 合っていない詰め物やぐらぐらする歯の咬み合わせの調整を行います
• 治療が終了した後も、定期的なメンテナンスで再発させないことも重要です。
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大切なセルフケア
歯周病の治療は、歯科医師、歯科衛生士だけの力ではなく、ご自身が自覚を持ってふだんから予防のための努力を続けることが大切です。
そのためには、日々のていねいなブラッシングが重要です。
1 歯に毛先をきちんとあてて磨く
2 小刻みに動かして磨く 3 軽い力で磨く 4 奥歯や、歯と歯の間、歯と歯ぐきの間を重点的に磨く 5 歯と歯の間はデンタルフロスや歯間ブラシを使う |
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デンタルフロス、歯間ブラシの使い方は、おすすめ動画をご覧ください。
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ホームドクターからのアドバイス
最近では、歯周病は「生活習慣病」ととらえられています。
食事の習慣やストレス、不規則な生活、喫煙などは歯周病を悪化させて治りにくくします。
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歯石になってしまうと、歯磨きではとることはできません。
定期的に歯科医院でとってもらいましょう。
軽度の歯肉炎までの段階であれば、適切なブラッシングと歯石をとってもらうことで改善します。
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セルフケア
毎日の丁寧な歯磨きで、歯周病やむし歯の原因となるプラークをしっかり取り除きましょう。
とくに、普通の歯ブラシでは届きにくい 奥歯や歯と歯茎のすき間、歯並びの不整、凸凹が強い場所には、ワンタフトブラシの使用が効果的です。
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歯周病と生活習慣病の関係
最近は歯周病と全身の病気との関係もわかってきました。
歯周病の方は、脳卒中 2倍、心筋梗塞 2~5倍、糖尿病 2~4倍 なりやすくなります。
プラークの中にいる細菌が、歯周病で炎症を起こしている傷口から血液中に入ってしまいます。
そして、血管内で毒素を作り出して、血管の炎症がおこるため、糖尿病や動脈硬化が進行します。
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歯周病と喫煙の関係
喫煙は、歯周病の危険因子の代表とも言われます。
喫煙による歯ぐきの血行不良や免疫力の低下、唾液の分泌量が減ることでプラークや歯石がつきやすくなることが原因です。
1日10本以上の喫煙で 歯周病にかかる危険は5.4倍に、10年以上の喫煙で 4.3倍に上昇します。
また、非喫煙者に比べて、歯周病の治療を行っても治りが遅く、治療後の再発率も高くなります。
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妊娠中の歯周病
妊娠中は、女性ホルモンの影響で歯周病にかかりやすくなるといわれています。
また、歯周病が早産や低体重児出産の危険性を高めることも分かってきています。
参考:
〇日本臨床歯周病学会 歯周病と妊娠
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8020(ハチマルニイマル)運動
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。
「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いから国や日本歯科医師会が啓発をしている運動です。
参考:
〇日本歯科医師会 8020運動
〇8020推進財団
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参考リンク
○ 8020推進財団
○ 日本歯科医師会 テーマパーク8020
○ 日本臨床歯周病学会
○ 厚生労働省 e-ヘルスネット
○ 日本生活習慣病予防協会
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